第26話 食堂

♡あさひを先頭にずらずらと竹生から来た面々が続いて歩く

通りすがる社員全員があさひに頭を下げて、あさひはにっこりと微笑み返す。


 そこには見たことのないあさひがいたの、マキノは二人の時間が違う軸で流れていっていることを身にしみて感じていたの。♥




「あら、さんじゃない、元気してた?」


「えっ、さくら、さくらだよね!」


「うん、一年ぶりかしら。」




♡たまたま、前から歩いてきたさくらと出合い、マキノは言葉を交わしたの

ビジネスで会うさくらは流暢に日本語を使っているわ、そしてマキノの耳元でそっと話したの。♥




「マキノ、アイタカッタヨ、会社ダカラ堅苦シクナッテゴメンネ。キョウハ泊マッテイクノ?」


「ちょっと、用事で来てて今晩中には帰んないといけないんだ。」


「ソウカァ、デモアンタノカオヲ見ルコトガデキテ嬉シイワ。」


「ごめんねせっかく会えたのに。さくら、さくらも、頑張ってるんだね。」


「チョットヤメテヨ、泣ケテクルジャン」


「うふふ、ごめん。」


「高島さん、じつは食堂ができたんですよ、もしよかったら見ていってください。若い子たちが野菜を食べていますから。」


「そうなんだ、よかったじゃん!あっ、よかったですこと。」


「ムリシナクテイイヨ。あっ。」


「やっぱりさくらだ。」





♡実行委員のメンバーは応接室に通されたの

そして深いソファーに座りいい香りのお茶がでてきたの。


なんか緊張しちゃって、マキノは気軽にあさひに話しかけられない感じに

でもあさひはいつものようにだらっとした格好でソファーに座りなおして。♥





「ごめんね、ちゃんとしていないと、下の子たちに示しがつかなくて。好きで始めた会社だけど、人が増えると自由がなくなっていくのよ。ねぇ竹生のお祭りってどんなことするの?」


「んとね、イベントは昼までなんだけど、夜の部門は湖岸にいっぱいの明かりを灯して、光のイベントをするんだって。」


「んだ、駅前から古い町並みをろうそくの明かりでつつんでよぉ、そんで、浜まで誘導して、浜では透明カプセルに入ったLEDをたくさん浮かべて幻想的な風景をつぐるんだ。きっときれいだぞ!」


「へぇ、光で観光客を呼び込むっていいじゃん!」


「だよ、ネーサンも遊びにきなよ。」


「ごめん行きたいのは山々なんだけど、8月1日は、初めての社員旅行なんだ。」


「そうなんだ、えっ、どこ行くんすか?」


「みんなで沖縄に行こうって。」


「いいなぁ、夏の沖縄ってハイシーズンじゃん、よくチケットとれたわね。」


「みんな頑張ってくれているからね。それぐらいしないと。」




♡マキノにはあさひが社長業で息つく時間がないように思えて仕方なかったの。無理してるわけじゃないけど、なんだか、あさひが少し遠く感じてしまって。♥




「そっか、あさひ、もしさ何かあったら、ウチに遊びにおいでよ。」


「何、マキノ気を使ってくれてるの?大丈夫よ。気持ちだけもらっとくわ。」


「そっ、さっきさ、さくらが食堂ができたとかいってたけど。」


「そうよ、あんたに若い子に野菜を食べさせろって叱られたから作ったのよ

野菜バイキングで、社員必ずボウル1杯の野菜を摂るように決めたんだ。

ちゃんと厨房もあるんだから!」


「すごいじゃん!えっ。。。厨房、、、あたし作んないよ。」


「ばれた?でも、ヘーキだよ、誰かさん内緒でウチの社員とお正月あってたみたいだし。」


「えっ、ばれてたか!」


「あんたから、玉子焼きの技を盗んで帰ってきたから。とってもおいしいんだよ。」





♡そう、去年、浜と東京に来たときに仲良くなった

伊賀里乃いがりのって女の子がマキノに心酔しちゃって。


 お正月マキノ家に遊びにきてたの、てか、料理修行なんだけどね。

それで今は、ネットの仕事をしながら、食堂のキッチンで玉子焼きを焼いたり、ちょっとしたおかずを作っているみたい。♥





「ああ、里乃ちゃんかぁ。あの子必死だったよ、みんなにおいしいものを食べさせるって。ねぇ、ねぇあさひ食堂見せてよ!」


「もちろんよ、だからあんたを呼んだのよ。みんなも食べて行ってよ、ちゃんとシェフも雇っているんだから!」




♡あさひに連れられて食堂の扉をくぐったマキノたち。

目の前にはたくさんのテーブルが並び、その奥に色とりどりの野菜と今日の定食の黒板が立っていたの。マキノの目からは心踊るような食堂だったみたい。♥

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