第22話 ちょっと暗雲



♡突如、実行委員の間に暗雲がたちこめたの


準備万端、プログラム、会場手配など集客に向けての段取りはついていて

あとは晴れを祈るくらいの気持ちでいたんだけど。


 イベントまであとあと2ヶ月だっていうところで

あいつがちゃったんだ。そう………ベンガラ太郎がね。♥





「ええええ!ベンガラ太郎が、謹慎だって、何やったんだよ!」


「これはさすがに、やばいんちゃう?」


「完全アウトやな、トリの歌手はどうする?今から他の人って難しいよなぁ。」


「前座が地元のバンドのあとに出演してくれるプロなんていねーだろ?」


「発想を変えて、マジックショーとかにすっか?」


「それがシメも何だかなぁ。」


「虎姫さんに、相談してみようか?」





♡やっぱりこいつは何かやると思ってたのよ、謹慎の理由なんだけど。


 ひどく泥酔した挙句に、スポンポンになって公園で自分の持ち歌を歌ってたんだって、それを帰宅途中のOLが目撃しちゃって。


 酔っぱらっているベンガラは、リサイタルで歌ってるつもりで、あまりの衝撃に動けないその子が、握手をもとめているって思い込んでて、手を差し伸べたみたい。


 結局すぐに警官がベンガラを取り押さえつけたんだけど………彼女もトラウマになるわね。♥





「なんだよ、公園で全裸リサイタルって。」


「てか、プログラム刷る前でよかったよ、こんなの載せたらシャレにもなんねーもんな。」


「だれか、いい人いないかなぁ。」





♡そこに息を切らした虎姫が、血相を変えて事務所に飛び込んできたの。♥





「おお!みんないでぐれたか!これ読んだか!」


「はい、読みました。それで緊急に集まったんですよ。」


「んだか、おらもスポーツ紙みて腰抜かしちまってよぉ、なんとか代役を探さねーといけねーなぁ。ひとつだけツテがあるんだが、オラのツテでもええが?」


「はい、もちろんです、で、どの方なんですかね?」


「うまくいって、近江舞子を呼べればとおもうんだげど。」


「ええ!近江舞子って。できるんですか?俺たち事務所に無下に断られて、仕方なくベンガラ太郎にしたんですけど。」


「ああ、そうだったのかぁ。事務所と契約してお金は払い込んでるんだろ?」


「はい、でも、近江舞子はギャラが。」


「契約書あるか?」


「はい、ああ、これですね。」





♡虎姫は契約内容を確認しているの、そしてちょっとニヤッとして

集まっている実行委員の顔をみながら、問題突破の方法を口にしたの。♥





「おら、東京の事務所に乗り込んで話つけてくるだ。そのときマギノも連れていきたいんだけど、ええが?」


「えっ、マキノちゃんがどういう関係で?」


「いや、マギノが実行委員にいることが鍵になるかもしんねーんだ?」


「どおいうことですか?」


「それは、あまり言えねーんだが、とにかく動いてみてもええが?」


「もちろんです、俺たちもバックアップします!」





♡動き出したら早いもの、その行動力はまるで師匠の長浜社長みたいだね。


 実行委員は虎姫の行動力を高く評価していたの、街のあちらこちらで顔を出しては、話をまとめて次の問題に取り掛かる。


………んなわけで虎姫はマキノに電話をいれてるんだけど。♥





「☎︎はい、居酒屋日吉です。ああ、先生かい、ああ。マキノか?奥で味噌の作業してるわ。ああ。てか、終わったみたいだな、替わるわ。」



「マキノ!おい、先生から電話だぜ。」


「あっ、はーい。虎姫くん?なんの用だろ、あっ、ポスターの件かな?」





♡マキノは日吉から受話器を受け取ると。♥





「あのな、マギノ。明日だけんども、おらと一緒に東京に行ってくんねーか?」


「はぁ、あんた何いってんの!バカもやすみやすみ言いなよ!」


「おめーがいねーと話がまとまんないんだよぉ。」


「ちょっと、いつも何の説明もなくて本題から入る!なんで私が話をまとめることができるの?てか、そもそも何のことよ!」


「ああ、ベンガラ太郎が無期限謹慎になっちまってよぉ。そんで、代役を探して東京の所属事務所に代役の要請がいるんだよ。

その会社の社長が、昔に長浜社長に世話になっていた人で…ここまで言ったらわかるだろ!」


「えっ、どういうことかわかんないよ!」


「とにかく、今晩から立つ、実行委員長が車を出してくれるってことだから。出発する用意をしておいでくれ。とにかく100周年祭のピンチなんだ、また電話すっからよぉ。」


「ちょっと、まって、あんた!おい。こら、虎姫!」


「ツー、ツーツー。あの野郎!こっちだっていろいろあるのに!」





♡マキノは浜と珠代に明日のことを話したの、そしたら明日はバイトちゃんたちの面倒をみてくれるって。


 浜は実行委員に振り回されているマキノの姿に、街につくした昔の自分をかさねているみたい。


そしてマキノは莉央に連絡したの。♥





「もしもし、莉央ちゃん。あのね、突然電話してきてごめんね。」


「えっ、かしこまって何の用なの?」


「あのさ、明日ってお仕事だよね。」


「………えーっと、あははは、最近お仕事無くて。。。」


「ごめん、そんなつもりじゃないの。あのね、実行委員で今晩から東京に行くことになったの、ベンガラ太郎さんが何かやたらかしたらしくて。」


「えええ!てか、あと2ヶ月じゃん!やばいよぉ、来週にはプログラムも印刷に回すとこなのに。」


「でね、虎姫くんが言うには、あたしが行くと話がまとまるって言うんだ。

だから、心細いから莉央ちゃんにもついてきて、もらえないかなって。。。」


「マキちゃんの頼みならオッケーだよ!」


「甘えてごめんね、あたしちょっと苦手なんだ、莉央ちゃんうまくあいつの手綱さばいてくれるし。」


「ああ、そういうこと。実行委員のことなら、わたしも関係あるもんね。わかったわ、出発の用意しておくから。」


「恩にきります。莉央ちゃん。」





♡大きなワゴン車が深夜に竹生を出発したの、委員長が運転で、マキノ、莉央、虎姫が乗り込み夜を徹していざ東京へ。


 ベンガラ太郎や近江舞子の所属する事務所での話し合いのために

虎姫、マキノ、莉央は車内で眠ることにしたの。♥

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