第20話 水辺のシートベルト




♡桜が散って一気に春になり辺り一面に花が咲き乱れ生命の息吹が輝きだす頃、マキノはっていうと。♥





「みなさん、レスキューさんに配達に行ってきますね。」


「姉御わたしもついて行っていいっすか?」


「えっ?もちろんいいけど、でも午後の授業とかないの?」


「大丈夫です。」


「じゃぁ行こっか、多賀ちゃん。」





♡マキノは、農大生バイトの「多賀くるす」を連れて、、トコトコ走る弁天味噌保存協会の軽バン「べ号」にのってとレスキュー隊の本部にむかったのね。♥





「マキノさん、こんなに重たい味噌樽を良くも一人で持ち上げますね。」


「うん、コツとかあるんじゃないかな、重たいから気をつけてね。」


「はいぃいぃ」





♡多賀はヨタヨタと味噌樽の片方を持っているけどマキノは多賀をカバーするのに必死みたい。………マキノ一人の方が早いよね。♥





「こんにちは、弁天味噌です、お味噌をお届けにまいりました!」


「やっぱりマキノさんのパワーにはついていけないです。」


「慣れよ、慣れ。」





♡多分、慣れとは違うとおもうけど。裏口のインターフォンを押すと優作とよくコンビを組んでいる草津隊員が出てきたの。♥





「ああ、いつもありがとうございます。えっと、優作ちょっと出張で出てるんだわ。なんかごめんね。」



「いいえ、お仕事でお味噌を届けているだけですから、あの、中のキッチンまで持って行っていいですか?」


「ああ、いつもすみません。俺が持って行きますよ。」


「でも、納品までがうちのお仕事なんで。」


「いいよ、だって、こっちも作ってもらってるんだから。」


「あっ、そうだ、百周年の何てひとだったっけ、あのすごく訛ってるひときてるよ、隊長となにやら話してるけど。」


「訛っているひと、ああ、虎姫くん、てか何の用事なんだろう?」


「あれ?こっちの子は?」


「ああ、紹介遅れてすみません。うちでバイトしてくれている農大生の多賀さんです。」


「初めまして多賀ともうします。」


「こちらこそ、草津っていいます。ああ、こんなとこでなんだから中に入って。よいしょっと、、、重い!」


「スミマセン」





♡マキノは多賀を引き連れて調理場に向かおうとすると、

来客用のテーブルの上に沢山の紙をのせて、山東隊長と話している虎姫がいたの。♥





「よぉ、マギノ!おめぇ、こんなことで何してんだ?」


「虎姫くんこそ何してんのよ?」


「高島さんいつもお世話になり感謝しております。」





♡ヒゲの隊長の山東は、すくっと立ち上がりマキノに挨拶をしているね。♥





「隊長さん、キッチン借りますね。」


「いつも作っていただいて、ありがとうございます!」





♡草津が調理場に味噌だるを運び入れると、マキノは早々に豚汁をつくる作業にかかるの。マキノについてきた多賀はきょとんとした顔をして、マキノの背後から声をかけて♥




「お味噌を納品して終わりでないんですね。」


「うん、本当はそこまでなんだけど、隊員さん達も疲れているから、納品した日はこうやって作って帰るのよ。」


「姉御って、お母さんみたいですね。わたしいつも感心しますよ。」


「お母さんって、、、まだ結婚もしてないんだけどな。」





♡手際よくマキノが調理をしていると、多賀が手伝いたいって言いだしたの。

せめて野菜の皮をむかせてくださいってね。で、大根のかつら剥きをお願いしたんだけど、あまり上手でなくて。♥





「あっ、多賀ちゃん、大根はねぇ、こうやって皮を剥いていくんだよ。かつら剥きっていうんだけど、皮と身の間に包丁をいれてね。そそそ、上手じゃん!」


「姉御、じつわわたし料理したことがなくて、もっぱら野菜を作ることのほうが楽しくて。料理下手だしあまり得意じゃないんですよぉ。」


「そうなんだ、料理も慣れだから数をこなせば出来るようになるよ、それに生産者ならきっと上手にできるよ。」


「そんなもんすかねぇ。」


「そんなもんよ。」





♡しばらくするとキッチンからいい香りが漂いだしていたの。

レスキューの待機でデスクワークしている隊員たちもなんだか、

早くお昼にならないかとワクワクしているわ。

てか、救助訓練者用の豚汁なんだけど。♥




「隊長さん、草津さん、できましたので、あの、ちょっと多めに作っておいたので、お昼にでも食べてください。」


「いつもありがとうございます。ああ、虎姫くんも良かったら。」


「ああ、マギノ!ちょっと、ちょっと、話きいてぐれ。」


「えっ、何よ、何の話なの?」


「実はよぉ、全国の水上レスキューさんの大会が7月1日の琵琶湖に日に琵琶湖であるんだってよぉ。んで、そのポスターの打ち合わせをしてんだけどな。

ちょっとこっちきて座れや、そこのめんこい子もおいで。」


「てか、あんた、地元の言葉を使っていると、やたら馴れ馴れしいわね!」


「すまね、莉緒ちゃんにこっちのほうが良いっていわれたもんだがらよぉ。」






♡虎姫と隊長は、レスキュー滋賀県大会のポスターの図案で悩んでいたの。

いろんなキャッチコピーを考えてはどれもピンとこなくて悩んでいたのね

それで、たまたま納品にやってきたマキノに声をかけたんだけど。♥





「えっ、そんなの突然いわれても、わかんないよぉ。でも、全国に告知する内容で何かかぁ、あっ。ニヤニヤ。( ̄ー ̄)ニヤリ。」


「んだよぉ、何ニヤニヤしておらを見てるんだ?」


「ライフジャケットはきちんと着ましょう、でないと溺れちゃうよとか。。。」


「おめ、まだ、その事いう!おらも反省してんだ、もう言わんでくれ。」


「ごめんごめん、でもライフジャケットは水の上のシートベルトみたいなもんだものね。」


「それ言われると、おら何も言えねーだよ。」


「!!!それだ!それ、それ!」


「えっ?隊長さん、どうされたのですか?」


「そ!それだよ高島さん!」




♡突然、冷静沈着な隊長がガッツポースをして立ち上がって、これは閃いたぞ!みたいな顔をしてマキノをみているの、さすが隊長だけあって、あまりの迫力にマキノは少しビックリしたみたいね。♥

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る