第19話 神様の腰痛



 マキノがここに来てから、3度目の春。

竹生の桜は薄紅色に染まり、あっちこっちから桜見物に人が集まってくるね。

それと同時に、弁天島への観光船が開線になるんだけど。

神様界にもちょっと大変なニュースが舞い込んできたの。





「ええ!ナギちゃんが腰痛だってぇ!」


「そうなのよ、ウチの旦那イベントで大きな鏡餅をもったら、グキって。」


「ナミちゃん、それっていつなの?」


「今年のお正月なんだけど。」


「えっ、もっと早く言ってくんなきゃ、今からでもお見舞いに行こうか?」


「あっ、いいのよ、そんなに気をつかってもらわなくても。」





 前にも話したよね、この地区を取りまとめてくれている神様で、イザナギのナギちゃん。

 なんだか腰痛になったみたいで、奥さんのイザナミのナミちゃんが、ウチに回覧板をもってきてくれて初めて知ったの。

いつもはナギちゃんがきて、白髭しらひげさんを呼んで将棋してんだけど

最近来ないなとおもっていたら。






「それでさ、ナギちゃんはどうしてるの?」


「今んところ、伊吹山の天狗さんから膏薬こうやくをもらって横になってるけど、あまり良くならなくて。」


「だめじゃん!ちゃんと病院に行かないと!」



「そうなの、今週来から高天原たかまがはらのクリニックで精密検査なんだ。

 あの人はくらいが高いから、ウチらの神通力では治んないのよ、自分で自分を治すこともできないし。位が上がると大変なことだらけだよ。」



「だよねぇ、位が上がると面倒なことばかり増えるもんねぇ。

まだ産土神うぶすながみのほうが気楽でいいわ、で、

ナギちゃんがいない間、この辺の取りまとめは、白髭さんなの?」



「ん〜白髭さんが、もう、十分取りまとめやってきたから若いひとにして欲しいって言ってるの。」


「ん〜、、、わたしだめだよ。そんなの、できないからね。」


「お願い、サラちゃん、旦那が帰ってくるまでの間、ちょっとだけ。」


「え〜、でもナミちゃんがそういうなら、仕方ないわね。」





 あっ、じつは、わたしの本名は「サラスヴァティ」っていうの。

ほら、ここではなかなか地元の人が言いにくいから弁天って呼ばれているんだけどね。本名の二文字をとってニックネームがサラなのよ。





「わたしでもナギちゃんの代打できるかな?」


「ごめん、できる限りアシストするからさ、おねがい、この通り。」


「あっ!、もしかして!」


「どうかしたの?」


「半年以上前にレベルアップして、最近になって神使しんしが出てきたのはそのせい?ナギちゃんの分までわたしのレベルが引き上げられたってこと!」


「そ、そうなの、てか、ウチの旦那、神使なんて連れてないわよ。てか、サラちゃん、術を使わず直接に人と話したの?」


「うん、フツーに喋ってきたの。わたしも始めはビックリしたんだけど、なんかフツーにしてたし。」


「えっ、どんな人間なの?」


「ほら、去年の夏にヨットがこけてさ、一人が不思議な助かり方したって噂になったじゃん!」


「ああ!なんかあったわね。なんだか、ちょっとぼーっとした子でしょ。」


「そうそう。そいつなんだけどさ。そんな神使には見えないんだよね、どっか抜けてるし。」


「へー、変わったことがあるもんだね、それって現人神あらびとがみとか。」


「そんなわけないでしょ。イエス様や、ブッダ様じゃあるまいし!」


「だよね、そんなオーラの人間なんて、この辺にはいないもんね。」





 ということで、ナギちゃんの代理を引き受けたの。まぁ、これも付き合いだからさ、最近若いひとが降りてきていないから、わたしにお鉢が回ってきたのね。あ〜〜〜だるいなぁ、会議でるの。


 ということで、神様の私たちだっていろいろとあるの。わかった?

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