第18話 ラジオ




♡打って変わって莉央のお話。3月も半ば、莉央のスマホに虎姫からメールが入ったの。「明日ですけど、どこかで会えませんか?」ってね。突然の虎姫からのメールに少しドキドキしちゃった莉央なんだけど。とりあえず京都の和食レストランで会うことになって。♥




「莉央さん、今日はお時間を作っていただいてありがとうございます。いつになくおきれいですね。」


「あら、先生ったらお上手ですね。」


「最近お仕事の方はいかがですか?」


「えっと。まぁまぁ、、、暇してます。」


「そうですか、ちょっとお仕事の件でお呼びだてしたのですが。」


「ほんとですか?どんなお話なんでしょうか?」


「まぁそれは、お食事をしながらお話しましょう。」





♡莉央はでっきりデートのお誘いかと思っていたんだけど。どうもお仕事の話らしくて、今月もほとんど仕事もなくて、とてもありがたい話。♥





「ここです、和風ですが構いませんか?」


「はいっ、てか、ここすごく高そうですけど。」


「いいですよ、ください。」





♡莉央はレストランにエスコートされて中に入ったの、

小洒落た内装でもしかして口説かれるのかと思うくらいのいい雰囲気の場所でさ。さらに、店員が奥の個室に二人を連れていくのね。♥





「あの、本当にこんなとこに連れてきていただいて。。。。」


「そんなことは気にしないでいいんですよ、この店はですから。」


「そ、そうなんですね。」





♡莉央はすこしセレブ気分を味わっていたの、すでにコースのオーダーが通っていてテーブルの上に懐石料理が並べられていく。

 料理長みずから挨拶をしてそして、二人きりで対面になるの。莉央はもうすっかり舞い上がっちゃってラジオの件は忘れてしまってたみたいね。♥





「あの、莉央さん。ちょっと堅苦しいので楽にさせていただいてもいいですか?」


「は、はぃ。どうぞ。。。(﹡’ω’﹡)♥」





♡虎姫は首元に人差し指をかけてネクタイを緩めている。瞳孔の奥に吸い込まれてしまいそうなくらいまっすぐで力強い目力、見たこともない虎姫の男らしさに少し骨抜きのご様子、そして彼が莉央に向かって口を開いたの。「莉央さん、じつは。。」ってね♥





「はぁ、やっぱ、つがれるなぁ。莉央ちゃん、かた苦しいのはやめて、食べましょう。いやぁ。こういうとこは緊張すんな。」


「ええ〜っ。はい、ああ、そうですね。」


「ごめん、おら、すんげー緊張すっからよぉ。個室にしたんだ。莉央ちゃんにはなんか、着飾きかざって話たぐねーからよぉ。」


「はいっ?虎姫さん、リラックスすると…そうなっちゃうんですね。」


「んだ。あの居酒屋さんでみんなにバレちまったからなぁ。ああそうだ、本題だぁ。まえに莉央ちゃんがラジオのDJしたいって言ってたなぁ。あれって本当かい?」



「ええ、ラジオってなんかいいですよね。

着飾らなくっていいっていうか、みたまま、感じたままを表現して誰かに伝えられるのってすごいとおもうんです。

 テレビだとすこしフェイクというか、大げさになっちゃったりするけど、そのぶんラジオは正直っていうか。」



「そかぁ、じつはよぅ、莉央ちゃん鳩マート知ってっだろ、あの鳩のマークが入ったスーパーだけんどもよ。」


「もちろんです。いつも買い物していますから。」


「だよなぁ、じつはな、そこの会長さんが湖北一帯でラジオをしたいって言い出してよぉ。よぐよぐ聞いってみっと、昔は竹生と、黒壁でラジオ放送局があったそうなんだぁ。」


「あっ、そういえば浜さんが言ってましたね。」


「会長さんはなぁ、地域のことを思っておられでなぁ、湖北を元気にしていきたいって、昔マギノのおじいさんと一緒にボートを漕いでいだらしぐてよぉ。あの時みたいに、もっぺん元気にさせたいんだと。」





♡ごめんね、虎姫のネイティブ言語ことばはちょっと分かりづらいので要約すると、地元スーパーの会長が地元貢献としてミニラジオ局を作りたいって。虎姫に相談したのね。♥





「これがよぉ、ただのラジオではねーんだ。インターネットを使ってバーンって情報を流すんだよ。」


「えっ、電波に乗らないラジオなんですね。」


「いやいや、電波にものせるんだ。」


「虎姫さん、ちょっとどういうことが、わかんないんですけど。」





♡虎姫は莉緒にそのインターネットラジオのことを語りだしたの。

 基本はインターネットでラジオ番組を制作して放送を流すところまでは、今どこでもやってるような内容なんだけど、ここからが独創的で。


 県内のそれぞれの鳩マートの屋上に電波塔を立てミニFMを開局して、そこからインタネットラジオをそのまま流すのね。つまり「電波→ネット」でなくて、「ネット→電波」の方式なの。♥





「つまりそれって…小コストでミニFMができるってことですか?」


「んだ、そのとおりだ、鳩マートから半径200メートル以内のエリアって。」


「そうか!住宅地の中心なら、告知できますよね。」


「んだ。それでだ、何で鳩マートの屋上にアンテナおったてるかわかるかい?」


「えっと、特売チラシみたいに特価品の告知とかですか?」


「おっ、近いな!ヒントはフードロスだよ。」


「フードロスって、廃棄食品のことですよね。」


「ネットでは基本的な部分をながすけんども。ラジオの範囲に入ってるエリアは、店独自の情報が流せるんだ。つまり。」


「あっ!閉店前の値引き品の告知!」


「大正解!午後5時からの値引き品を各店の店長がFM波で告知するんだ!」





♡再び補足を…ややこしいから方法を逆に考えればいいね

お店側としてはフードロスを減らしたいからリアルタイムの告知をしたい。

それも地域によって異なる情報を。


店によって商品が異なるから情報をエリアごとに届けることが必要だよね。

そこでつかわれるのがミニFMって訳。


 ただ、新しい局では24時間番組配信ができないから、ベースはインターネットとなる全国番組を流して、固定時間で地域情報を発信するってことなの。♥





「はっ、そんなこと考えたこともなかった。インターネットラジオと、ミニFMの融合なんですね!これって、虎姫さんのアイデアですか?」


「いやいや、鳩マートの会長さんと酒を飲みながら、こんなことできればいいなぁって話してたんだ。」


「す、すごい。」


「そんでだ、さっき言ったこっち側のラジオ番組なんだけんどもな。パーソナリティは、できれば女性がいーんでねーかっておもってるんだ。」


「えっ、もしかして、そのパーソナリティって、わたしにとか?」


「んだ。地方のラジオだども前に地域のこともしてみたいって言ってたからなぁ。会長とこの話をしながら莉央ちゃんのことばかり考えていたんだ。」


「私がパーソナリティ。。。。」




♡三年前の莉央なら後ろ足で蹴っていた案件だけど、でも、小さくても自分の番組が持てると思うと、どこかで必死に頑張っているマキノの横顔が見えてきたの。どんな時にもめげずにひたむきに仕事を通して自分にむきあっているマキノがね。♥




「虎姫さん。わたし。やってみたいです。この街のためにも、やってみたいです。」


「そっか、莉央ちゃんならそう言ってぐれると思ったよ。なにより、地元でもできる仕事だからね。んでね、会長のだしてきた条件は、黒壁と、竹生の交互のキー局交代なんだ。詳しいことはまた話すけんども、黒壁側からのパーソナリティと二人三脚ってわげだ。」





♡虎姫はラジオの詳細や運営方法などを、料理を食べながら話しているわ

莉央も仕事を通して自分の居場所が見つかるような気がしたの

それに、母の洋子の近くにいながら、実家の蝋燭店を助けられるとおもって。


 要件を話し終えると、おたがい笑顔で食事をしているね。自然体の虎姫の姿に莉央は彼を見直したみたい、そして話と食事が終わったら、一人の男性が個室のドアをノックしたの。♥




「ああ、こんばんは!会長さん。この前はどうもお時間いただぎましてありがとうございましたぁ。こちらの伊香莉央さんが、パーソナリティについて興味があると。あっ、この方は鳩マークの会長さん。」


「えっ、あっ。初めまして、わたし伊香莉央ともうします。テレビやモデルの仕事をしております。」


「ああ、よう知ってるよ!蝋燭屋さんの娘さんやろ。ほんまお母ちゃん似にてべっぴんさんやな。虎姫くんから聞いてもろたとおもうけど。ちょっとでも店と地域の役に立てたらなぁって思てなぁ。」


「社長。きっとうまぐいぎますよぉ。」


「そっか、まずは竹生の百年祭の時にプレ開局してみたいと思っているんやわ。その実況をしてもらえるか?莉央ちゃん。」


「ええええ!本当ですか!わ、わたしが!」


「んだぁ、がんばってみっぺ!」


「わかりました頑張らせてください!」


「会長さん、ということで。あと、でした。」


「えっ、どういうことですか?」


「あっ、言ってねがったな、この店会長さんがオーナーなんだ。」


「ええええ!」





♡とにかく、莉央の前にも竹生の住人として、お仕事ができることに気持ちが高まっていくわ。それにちょっと他にも、なにかがんばれる要素があるみたいよ。♥





「えがったなぁ、莉央ちゃん、おらはきっと成功するとおもうなぁ。」


「ありがとうございます、あのぉリラックスした虎姫さんって、なんか、カワカッコいいでした。」


「んだか、じゃぁ、もうこっつのキャラでいぐか!、てか、会長にははじめがらこれだけんどもよ。」


「なかなか、チャレンジャーですね、でもそっちの方が本心が届くとおもいますよ。」




♡この二人にも目が離せないわね。♥

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る