第17話 グランプリ受賞



♡8月1日の百年祭を目指して実行委員、市役所と商工会も動いているのね、街はもうお祭りムード。


 虎姫が祭りよりも先行している「作家のふるさと計画」も順調に来訪者数を伸ばしている、いまじゃちょっとした芸術の街になっているみたいね、週末の作家市では多くの人が物珍しい作品を求めて集まって来ているわ。


 でも、第1期の作家たちはこの百年祭を後に契約が終わって、新しい作家が入ってくるのね。新陳代謝っていうか、新しい感性を持ち続けるためには必要なことなんだって。


 そんな街の雰囲気が上向いている矢先にまたいい知らせが飛び込んできたの、第35回全国発酵食コンテストでなんと弁天味噌がグランプリに輝いたの。


 ああ、こそっとバイトの大学生がエントリーしたんだけどね。こんな少人数で作っているお味噌だけど、いまじゃ全国の料亭からスーパーまで注文がひっきりなしで、マキノたちも大わらわみたい。

 その表彰式なんだけど、7月30日で、今年の会場は鹿児島なんだって。♥





「ええっ!マキノちゃん、グランプリの授賞式に出られへんのかいな!」


「ごめんなさい、その日はあたし実行委員で、お祭りの宣伝で大阪のテレビ局なんです、だから珠さん、おばあちゃんと一緒に表彰式出て、珠さんこの通りお願い!」


「そうかぁ、マキノちゃん百年祭の顔やもんなぁ、浜ちゃんは何て言うてるの?」


「まだ、相談してないんだけど。きっと私に行けって言うと思うから、なんとかおばあちゃんを説得してほしいの、珠さんしかおばあちゃんを説得できないから。おねがい!」


「そうか、マキノちゃんがそう言うならそうするわ。」


「それに、この味をあたしたちに引き継がせてくれたのは、珠さんたちだから是非行ってほしいの。」


「うう、ほんまあんたはええ子やな、よしわかったマキノちゃん、うち、浜ちゃん口説きおとしたるわ!」




♡で、結局………♥




「マキノちゃんごめんな ……… 一人だけ残して。」


「うん、ぜんぜんいいよ、弁天味噌保存協会のみんなで行くなんて、社員旅行みたい!」


「そう、ウチと珠ちゃんだけってのもなんやし、他の人に相談したら実費でも行きたいって。」


「えっ、いいじゃん、経費にしたら、それに賞金が出るって書いてあったから。交通費と宿泊費くらいペイできるよ、おばあちゃん、みんなと楽しんでおいでよ!いままでず~~~~っと頑張ってきたんだからさ。」


「マキノちゃんが孫でウチうれしいわぁ。」





♡珠代が浜に相談したんだけど、浜は他のメンバーに譲ろうとしたの、そしたら珠代も他のメンバーに。結局、どうぞ、どうぞみたいになって。結局みんなで行こうって。まぁ、いいんじゃないかな。浜はマキノに抱きついて喜んでるね。♥





「あの、私たちも実費でついて行っていいですか?」


「ほうやなぁ、授業は大丈夫なんか、ほなっみんなで行くか!」


「姉御!一人残してごめんなさい!」


「いいよ、しっかり見て勉強してきてね。」





♡浜の義理の母親セツが作ったこの協会も一時はにない手不足で先行きを案じていたんだけど、でもこうやって時代にあわせて形を変えながら次世代につながってゆくことを嬉しく思っている。


 小海への罪滅ぼしとしてマキノを家に泊めた日、それからマキノが輝きながら成長しているすがたに、そらの小海を重ねあってみているかもしれない、浜もよく頑張ってきたもんね。♥

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