第11話 巣立ち




♡新幹線の車窓からは見える景色はさっきまでに賑やかさと打って変わって暗くなり、遠くにちらほらと街灯が見えていた。マキノが過去にあった話を淡々と浜に語っている。間もなく京都駅に着いたの。♥




「あ~あ~よく寝たなぁ。もう京都か。」


「日吉、なにぐーぐー寝てんの、いろいろ、大変やったのに、降りるで。」


「おかあさん、おうちかえろ。やっと二人で里帰りだね。」





♡まきのは浜がもっている、小海に語りかけると、長いホームを抜けて、竹生止めのカエル色の在来線に乗り込んだの


 そう、二年前、マキノが一人で竹生にたどり着いた景色と同じだった、でもいまは、血の繋がった家族ともに、家に帰るれることが幸せと思っているの。

 四人掛けのシートに座ると、日吉は腕組みをしてまた「うとうと」眠りについたわ。♥





「ほんま、日吉はよう寝るわ!寝る子は育つっていうけど、もうそれ以上育たんのに!」


「日吉さん横に大きく育ったら大変だね。」


「さっきの続きやけど、ウチ、あさひちゃんがマキノちゃんとケンカした日に聞いたんよ。」


「えっ、占いのこと?」


「あさひちゃんは、みんなでお商売したかったんやろ。でもマキノちゃんが旅してみたいって言うたから、へんな占いしてもろたって言うてたで。」


「うん、あのね、ほんとはね。。。」



♡マキノは竹生にたどり着いた本当の理由を浜につたえたの、もちろん、みんなはマキノの気持ちを知っていて送り出してくれたんだけどね。♥




= = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = 





「これからは、スマホを使って、個人同士がモノを売り買いする時代よ、ねぇ、みんなで会社作って、あっ、会社あるか。じゃぁ物販仲介事業しない?」


「えっ、beni5は辞めちゃうの。」


「社長が残してくれたものだから、なくすのはもったいないから、しばらくは休眠させておかない?」


「いいけどさ、スマホで個人同士がお金のやりとりなんかできるの?プライベートもあるしさぁ。」


「そうそう、プライベートが気になるよね。だからお互いプライベートを晒したくない人は、追加料金でコッチが代理発送で商品の売買をするのよ。」


「あっ、それなら、問題ないよな、あさひ頭いいじゃねーか!」


「でしょう、伊達に社長の下で経営学んでないわよ。」


「イデスネ!ジャァ海外ノオ客サンハ、サクラガ翻訳シマス!」


「いいね。ねぇ、マキノも一緒にしようよ。」


「えっ、あっ。う、うん、、、ごめん、ちょっと時間くれないかな、あさひ。」


「なによ、二つ返事で乗ってくるかと思ったのに。」


「うん、えっとね。」


「なんだよ歯切れが悪いな!」


「まきの!みんなで一緒にインターネット販売の会社しようよ、絶対に儲かるって!」




♡マキノはあさひが誘ってくれたことはすごく嬉しかったんんだけど

散々ネットで戦犯扱いされた自分が、新しい会社に入ることを躊躇したの

きっと、足を引っ張ってしまうかもしれないって。

そして、みんなにこう言ったの。♥





「……ごめん、一度自分で探してみたいんだ、何か、私にできる何かを。」


「何かって、何さ?したいことでもあんの?」


「まだ、それわ…わかんないけど。自分で探してみたいんだ、何かを。」


「やだよ!ねぇ、マキノも一緒にやろうよお!ねぇ、マキノ!まきのちゃん。」


「ちゃん付けで呼ばないで、なんか寒気した。」


「えっ。じゃぁ、ちょっと面白い所あるから行かない?」




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「それでね、あさひに変な占いの館に連れて行かれてねその占い師はなんだか嘘くさかったんだけど。


 でも、あたししか知らないことを、バンバン言い当てちゃうの、なんか話が面白くてつい聞いちゃって。それで、あたしは、竹生に帰って来るこができたの。そう、おばあちゃんと初めて会った前の日のことだよ。」


「覚えてる、マキノちゃんお味噌汁飲んでわんわん泣いてるのを見て、うちあの時、小海の子供が来たんやとおもったんや。なんせ、この子と同じ泣き方やったからなぁ。」





♡浜は膝の上で小さくなった小海を抱きながら。マキノが居酒屋日吉にやってきた日のことを思い出している。今と同じ白いワンピースでずぶ濡れになったマキノが二年の間に、自分のルーツを見つけて、そしていま竹生に根を生やして生きていることに感謝したの。♥





「おばあちゃん、あたし、あの占いのヒトきっと、神様だと思う、じゃないと、あたし竹生に帰れてないもん。」


「うん、きっとべんてん様のおかげやな。

弁天島のべんてん様は、竹生に住んでいる女の神様なんや

そやからうちら弁天味噌を守っていってるんよ。

きっと、小海が伝えたかった味を、マキノちゃんにつくらせたかったんちゃうかな。」


「うん、だからあたし、おかあさんの分まで、ここでがんばる!」


「♫ぴこーん、ぴこーん♫」





♡マキノのスマホにメールが入る。それは莉央からだった。♥





『ねぇ、マキちゃん、いまどこ?』


「あっ、しまった。帰る時メールするって言ってたの忘れてた!」


『ごめん、おばあちゃんと話し込んでわすれてた、ほんとごめん。大松越えたとこ』


『迎えにいくわ、こっち大雨だよ。』


「おばあちゃん、竹生は大雨だって」


「ほなマキノちゃんがうちに来たときみたいに雨に濡れながら帰ろうか?」


「えっ、なによ、おばあちゃんのイジワル!」





♡しばらくすると終点の竹生に電車が着く。降りる人はまばらで、大粒の雨が街を濡らしていたの。階段を降りて改札を出ると。そこには優作が立っていたの。♥




「えっ、優くん、だれか、まってるの?」


「ちがうよ、マキノちゃん達を迎えに来たんだよ。」


「えっ、莉央ちゃんが迎えにきてくれるって。」


「莉央が急に用事ができたからお願いって。東京楽しかった?」


「うん!」




♡マキノは優作を見上げると、すごく嬉しくなってしまったみたいで、

ここ一週間で一番の笑顔を見せて隣に並んだの。

浜と日吉は二人の姿をニコニコと見ている。

そして浜の背後から低い声で誰かが声をかけてきて。♥




「浜ちゃん、おかえり。」


「きゃぁ!おどかさんといてぇなぁ。珠ちゃんかいな!もう。」


「なかなか、お似合いの二人やなぁ。浜ちゃん、マキノちゃんはウチに来てもらうで。」


「それは、どうやろ?あのこうちの場所が好きみたいやし、まぁ、どっちにしても、孫の顔がみられたらいいな。」


「ひ孫やろ。」




♡優作の隣にマキノが座り、浜達は後ろに乗ったの、浜が抱えてる小箱を見て珠代は目を潤ませながらそっと手をあわせたの。♥




「おかえり、長い家出やったな、みんな待ってたさかいにな。

ずーっとゆっくりしたらええわ。小海ちゃん」




♡小海が出て行った始発駅は、小海の終着駅になって。

そして今日も地域の人の往来を支えているわ。♥

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