第07話 虎姫
♡マキノ、浜、日吉を乗せた新幹線は名古屋を過ぎて京都にむかっている
もうすっかり外は濃紺の夜空が覆い、その中にまばらな星が輝いていたわ
浜に自分がいたグループbeni5が絶頂だった頃の話をしているね。♥
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「はいはい、みんなお疲れさん!今日はここまで!このあと焼肉行こうとおもうんやけど、用事の無い子は一緒にいこか、ほな、行ける人!」
「はぁい!はいっ、は~い、ハァイ、あっはい。」
「全員でいこか、ほな行くで。」
♡一行が向かったのは都内では知る人ぞ知る焼肉店に私服に着替えたメンバーと社長が奥の広いテーブル席にすわったの。♥
「ジュージュー」「モウモウ」「じゅわぁっ。」
「めっちゃ美味しそう!やったね。」
♡社長と5人はロースターを囲みながら、お肉を焼いている。
下で踊っている炎に肉のあぶらが滴り落ちる、肉から滴ったその肉汁がバーナーの金属に触れるたびに「ボウゥ」っと白煙になり、
テーブル席を美味しいお香りで包んでいくの。♥
「アカペラの練習しといて助かったなぁ。しかも一発で決めて、テレビ局も放送事故にならんで感謝しとるやろ、仕事増えるで。いっぱい食べてエネルギー貯めといてや!」
「ほんと、まさか、携帯をマイクにして歌うなんて考えたこともなかったわ。」
「でも、なんか手作り感があって楽しかったね。」
「キットテレビノ前ノファンモヨロコンデイルワ。」
「ひなつの高音とても綺麗でなんかうっとりしちゃった。」
♡メンバーと社長が、お箸で美味しそうにローストできたお肉をつまみながら、スーツを着た一人の男がマキノたちのテーブルの横に立っていた。
その男は社長と会話を交わすと、5人に頭をさげたの。♥
「ああ、さっきワシが呼んだんや!じつはな、ちょっと営業が忙しいなってもてなぁ、それでワシの代わりに君らのプロデュースをしてくれる、虎姫くんや。」
「初めまして、虎姫聖也と言いいます、ファンダンス企画でディレクションをしていましたが、みなさんの活躍をバックアップすべく、明日からこちらで働かせていただくことになりました。なにとぞ宜しくお願いいたします。」
♡年齢はマキノたちよりちょっと上で、ほぼ同世代って言ってもいいかな
スタイルのいいイケメンでタレントさんと間違ってしまうくらいの男性で
突然の社長の発表に、ひなつ、いぶき、さくら、マキノの四人がちょっと浮かれた感じになったのだけれど、あさひだけが少し冷たそうな声であいさつしたのよね。♥
「こんばんは、あら、タレントさんかと思ったわ、まぁ、しくじらない程度で頑張ってね。」
♡あさひだけなんか、ちょっと雰囲気悪そうね。
まぁそうなるわな、実際に社長がいないときは社長代理でテレビ局との交渉ごともこなしていたからね。
そう、プレイングマネージャーって言ったらいいのかな。なんだかんだ言いながらチームを守っている
社長も楽させてあげたいんだと思ったんだけど、生まれついての負けん気の強さが出てきてちょっとギクシャクかな。♥
「こちらこそ、社長からあさひさんがマネージングもしているって聞いています。もっとアイドル活動に力を入れられるように頑張りますので。」
「ふふ、まぁ楽しみにしてるわ。」
♡たしかにあさひ自身も自分に負担が増えているのはわかっていたけど、自分なりにこのチームを中から育てていた感覚が強くてね、簡単には「はいどうぞ、お任せします」って気分にはなれなかったの。
このころから次々とアイドルグループが雨の日の後のタケノコみたいに、どんどん現れてきてね。それに押されてbeni5も人気がじわじわと下降線をたどっていたの。
もう彼女たちも25を過ぎてね、こんなこと言ったら残酷なんだけど、アイドルの期限を超えていたの。♥
「ほな、営業回ってくるわ、みんな任せたで!」
♡本当に謎の多い社長で、お仕事は社長がバンバン取ってくるのね。
でも彼女たち以外の新しい人を事務所には置か無い主義で
beni5一本柱でこの事務所は頑張っているの。
でも、ちょっとなんだか変な噂が流れちゃってね。最近になってbeni5以外によその事務所の演歌歌手をプロデュースしている噂が立ったんだ。
まぁ、隠れた才能を見抜く力の高い社長だし、困っている人を見て見ぬふりするのが出来ないから放っておけなかったんだよね。そんなある日、あさひ一人で社長室に乗り込んできて、口を出したの。♥
「社長!最近、他の人のプロデュースしているって噂がでてます、それって本当なのですか?」
「ああ、ほんまや。」
「なぜです?私たちがいるのに。それに社長疲れ気味ですよ、他の人のことよりも自分の体を大切にしてくだださいよ!なんで無茶すんの!」
「そうなんよなぁ、わかてんにゃけど、beni5を立ち上げるときもぎょうさんの人に助けてもろたさかいな、恩返しやとおもてやってるんやわ。ほんでもあさひにそう言われたらちょっとセーブするわ。」
「本当ですよ。社長のことが心配なんだから!」
♡あさひにとって社長は特別な存在だったの、まるで父親のようにしたっているんだ。
きっとあさひが生まれて初めて出会った、自分を守ってくれる大人だったからかもしれないわね。昔からあさひはいつもどこかでそういう人を探していたの
あの時、野球場で出会った二人。いつかきっと心で結びつく予感があったのかもしれないわね。♥
「わかった、ありがとな、ワシみたいなもんを心配してくれて」
「あたりまえでしょ、社長の、バカ!。」
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