第06話 スターダム



♡さらに新幹線は西に進み、名古屋駅ではたくさんの乗客が降りていく

窓から見える夕暮れの空は紫に染まり、街にはポッ!ポッ!とあかりが灯り始めていたの。

 新幹線の中は空席が目立ちはじめているね、前席の日吉がグーグー寝ているけど。浜とマキノは続きの話を始めるの。♥




「社長さんってちょっと変わった人やなぁ、ほんでも人の気持ち掴のが上手なんやね。」


「そうなの、社長がどこから来たのかまったくわからなくて

ちょっと掴み所が無かったんだけど、なんでもできる人でね、作曲、振り付け、営業、ほんと不思議なくらいになんでもできたの、私たちはもう社長の才能に驚くばかりで。」


「わたしにはようわからへんのやけど、一人で何人分もの仕事をしてまうってことかいな。」


「そう、そうなんだよ、それにね、とても機転が効いてね、なんでそんなこと考えられるんだろうってことを一瞬でひらめいちゃうの

 なんだか、社長の話をしてると、今のあさひのことを話しているみたいだなぁ。」




====================================




♡金曜20時に放映されている人気音楽番組のミュージックアワー

高視聴率を叩き出すお化け番組でその影響力は絶大で、音楽活動しているアーティストはでも出たい番組。なんと、その人気番組にbeni5が出場することになったの。


 普通ならスタジオ撮影なんだけど、新しく横浜の湾岸に出来たヨコハマシーワールドで宣伝を込みの中継でミュージックアワー初登場となったの。


 まぁ、その施設のマスコットキャラクターを務めている関係もあったんだけど、でもとても異例なことだったのよ。


 その日は雨が降ったりんだりで不安定な天候ながら、午後から着々と中継の用意が進んで行ったの。そして夜になりその怪物番組が始まったわ。♥





「さぁ、次は人気急上昇中のbeni5のみなさんです、なんとbeni5の皆さんは昨日オープンしたばかりのヨコハマシーワールドで水槽を前での中継となっています。ヨコハマシーワールドのbeni5さん。」





♡女性アナウンサーがスタジオから中継会場にカメラを回したのね。

テレビの前の映像は水槽の前に立っている五人を映している、センターでマイクを持ったあさひが女性司会者の問いに答えているの。♥





「こんばんは!みなさんはじめまして、私たちbeni5でーす!。

私たちは昨日オープンしたヨコハマシーワールドに来ています!

ほらごらんください、いろんなカラフルな魚が泳いでいますね。


 さて、私たちがいる場所がどこだかわかりますか?

じつはここ水族館の中でなくて、屋外の全天候型レストランの前なんです。」





「ゴロゴロゴロ!」





「ちょっと雷なっちゃってますけど、でも大丈夫です。

ここは屋外ですが、屋根があって全天候型レストランになっています。

真夏と真冬は透明な壁あるから冷暖房も完備で屋外の雰囲気が楽しめるんですよ。」





♡あさひが一人でスタジオ受けをしいる間メンバーは散らばって、施設の見所に分散してスタンバイしているの、そして中継をひなつに回すの♥




「こちらをご覧ください、レストランの中には流れる川や、ヤシの木、芝生が植えられていて、まるでピクニック気分でお食事ができます。料理も豊富で、中華から、ハワイアンまで、なんと300種のバイキングになっているんですよ。」





♡ひなつが受けて、レストランのイメージや雰囲気を伝えていって、いぶきに回したわ。♥




「はぁい、こちらがメインの大型水槽です、なんと横幅が30メートル高さが15メートルの大きな水槽ですが。じつは、あちらをご覧ください。なんと水槽の中でお食事ができるんです!」





♡水槽の中には、なんと食事をしている、さくらとマキノの姿があったの。♥





「はいはーい、こちらが水槽内席です。下の通路で繋がれたこの空間では360度全部が水槽なんです!水槽が上から見ると「ロ」のような形になっていまして、その中央の空間の席で、綺麗なお魚が泳いでますねぇ。

まるで水中気分でお食事が出来ます!」





♡5人は広いレストランに散らばり店内を紹介しているんだけど、遠くに聞こえていた雷の音がだんだん近づいてきちゃって。あさひがスタジオの女性司会者と会話をかわしている、レストラン内に別れていたメンバーが水槽の前のステージに集まってきたの。

 そのとき目前には150人くらいのファンがbeni5の出番を今か今かと首を長くして待っていたんだけど。♥




「ピカッ!ドーン!、ゴロゴロ、、、」





煌々さんさんとライトアップされたステージに5人が立った瞬間、轟音と共に照明が「フッ」っと消えちゃって、辺りは真っ暗になっちゃったの。

 かろうじて非常灯のグリーンのランプがついていだけで、足元も見えなくなっていたのね。♥





「きゃっ。」


「うわぁ。」


「大丈夫ですか?会場のbeni5のみなさん、大丈夫ですか?こちらスタジオです、beni5のみなさん!」





♡近くの電線に落雷しちゃって停電になったみたいで、会場はパニックになっちゃって。

 スタジオ側も突然中継が途絶えてしまって必死にスタジオの女性司会者が呼びかけてるんだけど、声が届く訳ないよね。その時舞台の袖にいた社長が携帯のライトで5人を照らしながら舞台に上がってきたのよ。♥




「みんな平気か?大丈夫か、あさひ、ひなつ、いぶき、さくら、マキノ!みんなおるな、ええか、このパニックを抑えんとお客さん怪我してまうかもしれん

 お客さんにスマホとか携帯出して明かりをつけてもらうんや、ほんでな、左右に振ってもらえ。落ち着け、大丈夫やこんなことはよーある、逆にチャンスやとおもて行こ!」



「みなさーん、平気ですよぉ、じゃぁ、携帯の明かりをつけて振ってもらっていいですか?」


「はい、1、2、で左右に振ってください!」




♡150の携帯のライトが点灯して観客席が「ポゥ」って明るくなっているの。掛け声に合わせてそれを左右に振ってもらっている、さっきのパニックは収まり、会場には妙な連帯感が生まれたの。♥




「わぁ、すごい綺麗だね。ペンライトみたい。」




「PAも使われへん、150人やアカペラで行こ!

みんなが持ってるスマホをここにアクセスしてくれ同時に7人まで話せるサービスや。ほんでそれをマイク代わりのするんや!」




♡そういうと社長の携帯にスタジオの司会者から電話が繋がりそれをあかね(あさひ)に手渡したの。♥




「はい、こちらはみんなケータイをペンライトにしてスタンバっています。

あの、電気がまだ来てないみたいなんで、最新のインターネット同時通話システム、チョコトークで歌わせていただきます。

このままアカペラで行きまね。では、聞いてください、サマーストーリーズ。」




♡シーンと静まり返った場内に5人のキーを合わせる声が聞こえる

音を一発で合わせた5人はイントロをアカペラのコーラスで盛り立てている


 いつも練習時に音源が落ちることを想定したて練習をしていたことが功を奏したの、そして自分たちの歌をファンの心に届けるように丁寧に歌っているわ。♥




「1、2、3、4、♪ラーラーラーラー、碧く光る、思い込めて今あなたの胸に飛び込みたい!………」




♡各自がマイク代わりに握っているスマホは局とつながっていて、

そのコーラスが全国ネットに乗って流れていくんだ


 社長はスマホで動画を撮影し放送局に送っているの。その映像は観客が振っているスマホの明かりが、ピカピカの水槽に映りとても幻想的な情景だったの。


 そして後半の盛り上がるところで照明が戻って五人が浮かびあたったんだけど、明かりがついて驚いたのは暗闇の中でもフォーメーションが崩れることなく均等な間隔で横一列に並んび歌っている姿だったの。♥





「みなさん、ありがとうございました!」





♡観客からの鳴り止まない拍手が、スタジオにも飛び火してテレビの前の視聴者も盛り上がっているみたいね。社長のとっさの判断、落ち着き観客優先のbeni5の姿が彼女たちをより一層スターダムに押し上げていったの。

 そして、無事に収録の時間が終わり。あさひが観客に向かって再び声をかけているわ。♥





「みなさん、今日はご協力ありがとうございました。せっかく来ていただいたのと、収録ご協力いただいたお礼に、帰りの時間の許す方はぜひ、もう一曲聞いていってください。」


「ホントニ皆サンダイスキデス!」


「じゃぁ、もっかいいこっか!サマーストーリーズだぁ!」




♡会場の計らいで少し時間もらってミニライブでなんと3曲も。

てか、音源もってきてたのね。

その急ごしらえのライブはすぐに動画サイトにアップされると、再生回数はどんどんと増えていったの。


 ハプニングはあったものの。それを跳ね返しチャンスをつかんだ5人と社長

神対応と言われてこけらおとしができた会場、テレビ局のスタッフ。

みんな笑顔になって収録は大成功だったの。


 ここから彼女たちは一気にスターの階段を駆け上がっていくんだ。♥

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る