第14話 おら!
♡都会的なイメージのある虎姫なんだけど、お酒の力で本当の自分のことを語り出したの、言葉のひとつひとつが真剣で重みのある言葉だったわ。
そして3人が話していると、日吉の携帯に電話がかかり奥に行ってなんか話しているわね。♥
「じゃぁ、いま竹生のためにやっていることって、虎姫さんがしたいことなんだ。」
「んだ、最後までイベントをみとどけたいなぁって思ってな。
あの、莉央さんは未来のためにしたいことってあっか?」
「うん、私、マキちゃんを見ていたら、なんか竹生っていい街なんだなって、思えてきてさ、高校生の頃は東京に行って、モデルして、女優になってって思っていたんだけどね。狭き門に叩きのめされちゃった。」
「んだな、テレビで活躍してる人って、ほんの一握りだもんなぁ。」
「だからさ、今のマキちゃんはすごいなぁって思ってるんだ。必死にお味噌作って、竹生のために実行委員としても頑張って。まるで浜さんみてるみたいで。あっ、マキちゃんの本当のおばあちゃんなんだけどね。」
「聞いてます、この街の女ボスだっで。」
「あはは、それ聞いたら浜さん怒るよ!だれがボスや!って言ってね。
でも最近思うんだ。なんかこの街にいながら情報の発信ができたらいいなぁって。この街情報をみんなに届けるラジオDJとか。でもこんな田舎だからだれも聞かないかな。」
「んなこと、ねーだよ。誰かは聞いてくれるって、それにこの街でなくて、黒壁も合わせれば結構なエリアになるんでねーが?」
「地域ラジオか、できたらいいなぁ。」
♡二人がカウンターに並びビールを飲みながら、自分の未来像を語り合っているね。ちょっと勘違いしてしまいそうな雰囲気だけど。うふっ。
まぁ、お互いいい歳ですから。雰囲気良く二人が話していると、裏口の戸が開き浜が出てきたの。」♥
「だれが、女ボスやて!」
「えっ、浜さんいたの?」
「ほらいるわいな、うちの家やもん。」
「すみません。」
「冗談や、ほんでも珍しい組み合わせやな。あんた先生やな。いつもうちの若いもんがお世話になりまして。」
「うちの若いもんって。浜さん自分で言ってますよ。」
「ほんまやな。あはははは。」
「そうや、じつは昔は湖北だけでラジオがあったんやで、まだテレビが普及してへんかった時になぁ」
「そうなんですか?」
「ああほんまや、最近ではあまり行き来ないけど、昔は黒壁との交流はぎょうさんあったんやお互いの情報がすぐわかるようにって、弁天島にアンテナ建ててな。黒壁と竹生で交代でラジオ番組してたんやで。」
「えっ、そんなの初耳です。」
「まぁ、昔の話しやさかいなぁ、それよか先生さん、またなんとか実行委員を助けてやってもらえまへんやろか?」
「じつは、その件で。」
♡女ボス浜って、言い得て妙ね、ビッグママって感じかな。浜が莉央と虎姫と話していると、玄関の扉が開いたの。♥
「ただいまぁ、あー疲れた。あれっ、莉央来てたんだ、日吉さんにさっき電話したんだけど。あれっ?えっ。えええ!虎姫くん!」
「そうや、日吉に先生が帰らへんように止めといてくれって、マキノちゃん、先生がなんか言いたいことあるみたいやで。」
♡まきのは虎姫の顔をみると、口を一文字に閉じて、ぎゅっと拳を握り、そしてずかずかとカウンターに座っている虎姫に向かって無言で歩いていく、
その姿を見て莉央が止めに入るんだけど。♥
「ごめんなさい!叩いちゃって。あたしが悪かったの、だから帰ってきて。
おねがい!力を貸してっ!」
♡あまりの勢いでマキノが歩いていくもんだから、つい、また。手が出るのかとおもいきや、カウンターに座っている虎姫の前に立つと、深々と頭を下げて叩いてしまったことを謝っている。
そのあとに入ってきた実行委員のメンバーも、たじろいでいて、もちろん優作もびっくりしていたわ。そして虎姫がカウンターの席から腰をおろし、地べたにひれ伏して。♥
「いんや、オラのほうが悪かったんだ!マキノ、安曇川くん、許してくんろ!おら、つい、カッコつけようと思って突っ張っちゃって。雲隠れしてすみません。おねがいだ、最後まで仕事させてけろ。」
♡「ぽかーん」そらそうよね、あんなにスタイリッシュでパリってした男前が、突然オラとか言い出したらそりゃびっくりするわ。
10秒ほど時間が止まってしまったんだけど、委員長も虎姫と同じく土下座をして、地べたに頭をつけているの。そしたら実行委員の全員が同じように土下座をして。♥
「先生!俺たちを、この街を見放さないでください、先生の力が必要なんです。先生が尽力してくださったことは重々にわかっています。最後の打ち上げまでぜひ俺たちと一緒にいてください!」
「僕からも、わたしも、おれも、………あっ、あたしも!、おねがいします!」
♡マキノまで床に手をついておねがいしているね。莉央と浜だけは、全員が土下座しておねがいしているシーンをポカーンとみている、そして莉央はわらいだしたの。♥
「あははは、ちょっと、あんたたち土下座なんて何時代よ。いいからみんな手を洗ってらっしゃい。もう、マキちゃんまでなによ。先生は、みんなが気になってこうやって帰ってきてくれたのよ。いいでしょ、また一緒に作っていっても。」
♡あんたが一番初めにマキノに土下座したんじゃない、まぁいいけど、そこに裏で下ごしらえをしていた、日吉が裏口から入ってきたの、なにやらいい香りがする大皿を持ってね。♥
「なんだよ、いい歳の大人が地べたに這いつくばって、
誰かコンタクレンズでも落としたのか?
ほら、うなぎ、うなぎの蒲焼だよ!川魚屋のしんちゃんがくれたんだ。
いつも実行委員のみんなにはお世話になってるから食わしてやってくれってな。おまえら、うな重食うだろ?」
「まじで、食う!、はいはい食べたい!、うまそー食いたいっす!」
「よっしゃ!じゃぁマキノ、厚焼き卵焼いてくれないか?」
「うん、日吉さんわかった!あたし玉子焼くね!」
「ほら、みんなぼーっとしてないで早く手を洗ってっ。」
♡とりあえず、この街のブレーンも帰ってきたみたいだし、
これで一安心と言いたいところだけど、演歌歌手のベンガラ太郎が気になるわね。
街の担い手たちが集まって居酒屋日吉で大いに騒いで団結しているみたいだから大丈夫か。でも君たち大学生の飲み会かって。♥
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