第11話 人の心

私はただ見ていることしか出来なかった。

「燐火ちゃん。大丈夫かい?」

後から来た南雲さんが私に声をかけてくれた。

「あ、あの、中野中佐が、た、多摩大佐が———————」

南雲さんは静かに私を包み込んでくれた。

結局、そのあと私はそのまま自分の家に帰った。


次の日

「おはようございます……」

私は第1部の1番最後に入ってきた。

「やあ、おはよう。燐火ちゃん」

南雲さんの声がいつもより優しく聞こえた。

「大丈夫でしたか?燐火さん」

杏子ちゃんが聞いてきた。

「あ、う、うん。大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

私はそう言ってフラフラしながら自分の席についた。

「いや、全然大丈夫じゃねーじゃん。りん、こっちへ来い!」

「ん?」

私は翔に呼ばれて行った。

「ホラよ」

ポン!

「ん?」

私は1つの饅頭をもらった。

「饅頭?」

「お前の好きな梅風味のやつだ」

「あ、ありがとう」

私は戸惑いながらも言った。

「鹿野さん、悲しい事を思い出させるようで悪いんだけど、この後、昨日の現場に居合わせた人全員、会議があるんだけど……」

瑠衣斗さんが気まずそうに言った。

「うん、大丈夫。出席する」

私はそう言って立ち上がった。

「行こう」

私と瑠衣斗さんは会議室に向かった。

ちなみに南雲さんや翔、杏子ちゃんは今回も会議には参加しない。

全員では来ないようにと言われたそうで。


ココからは私が後で杏子ちゃんから聞いた話。


「立川さんも意外と優しいんですね」

杏子ちゃんちゃんが言った。

「は!どこが?」

「さっき、燐火さんの大好きな饅頭あげた理由って、励ますためだったんですよね?」

「は!違うし!」

「翔君はツンデレだね~」

南雲さんも言った。


ココからは元の話。


「失礼します、特殊戦官本部6区〜9区担当第1部所属、佐藤瑠衣斗少佐です」

「同じく、特殊戦官本部6区〜9区担当第1部所属、鹿野燐火中尉です」

「座りたまえ」

会議室の雰囲気は最悪だった。

「では、昨日発見された、中野流中佐と多摩智巳大佐ですが、ヒール魔法では回復せず死亡と断定されました」

さらに雰囲気が悪くなる。

「昨日の、中野中佐と多摩大佐の動きですが、2人とも会議後、同じ部所属のものに昼食をとってくると言ったきり戻ってきていないということです」

「犯人の目星は?」

聞いたのは外間君だ。

「前回の鎮圧の際に襲ったものと同一犯だと考えています。座りなさい」

興奮して立ってしまっていた外間君を山野本部長が注意した。

「昨日の第一発見者は鹿野中尉と佐藤少佐だったか?」

私たちは、え?っと思った。

「いいえ、私たちの前に何名かが先に到着していました」

私は言った。

「本当かね?」

辻村司令官が近くにいた川辺大尉に聞いた。

「事実です。ですが、ショックのあまり寝込んでしまい、今回の会議には来ていません」

(ショックで寝込むって……牢獄を見たことがないんだな……って私も寝込むほどではないけどショック受けたからお互い様か……)

私はそう思いながらターミストを操作した。



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