第12話 褒めるって?

会議も終わり、私達は第1部に戻った。


会議の後、殉職した中野中佐と多摩大佐の告別式を行うということを聞き、私は元部下として参加することにした。

もちろん、翔も元部下として参加する。


「お帰り~」

第1部には翔しかいなかった。

「ただいま。南雲さんと杏子ちゃんは?」

私が聞くと翔はそっけなく言った。

「知らない。気づいたらいなかった」

「そう、ありがと」

私たちは自分の席に着いた。

「あ、そうだ翔、中野中佐と多摩大佐の告別式、私と翔が元部下の代表としていくから」

私がそう言うと、はいはいと言うように翔が手をひらひらさせた。

(それにしても南雲さんと杏子ちゃん、どこ行ったんだろう?)


「失礼します」

私たちが書類を整理していると、川辺大尉がやってきた。

「鹿野燐火中尉と立川翔中尉はいますか?」

「はい」

私は席を立ち、翔を引っ張りながら川辺大尉のところへ行った。

「中野中佐と多摩大佐の告別式の日程を伝えに来ました」

「あ、ありがとうございます。日程は?」

私と翔は聞いた。

「日程は明日、2030年4月18日18時から近くのアザモモールというところで行います」

(なんで敬語なんだろう?)

「2人は代表ですので、1時間前の17時には来てください。以上です」

テクテクと早足に行こうとする川辺大尉を私は呼び止めた。

「あ、あの、なんで私たちに敬語なんですか?私たちよりも位、上なのに」

私が聞くと川辺大尉は気まずそうに言った。

「だって、お2人は上の方でも有名な天才特殊戦官なんですよ」

「え……天才?」

私と翔はキョトンのしてしまった。

「はい、1発合格で特殊戦官になった19歳の天才特殊戦官。おまけに2人は幼馴染と言うじゃないですか!なんか緊張しちゃって……だって私なんか3回も試験に落ちてようやくなれたぐらいですから」

「俺が合格できたのは全部、りんのおかげだから」

翔がいきなり言った。

「えっ!ちょ、ちょっと待って!別にちょっと入ったのが早かっただけでそこまでなりますか?それに、翔が合格できたのは全部翔の頑張りの印だから。私のおかげじゃないよ」

私は慌てて言った。

「いいえ、とんでもないですよ。最年少合格を3つも更新してしまったんですから」

「俺が合格できたのは全部りんのおかげだから、絶対に」

「それに、お二人は満点で、今まで満点を出した人はいなかったもんですから、そこでもまた、有名でして……」

(はあ〜、なんかもう変になりそう)

この後も2人はひたすら同じような事を言い続けた。

私は聞いているのも反論する気力をなくして、自分の机に戻った。


「鹿野さんも大変だね」

席に戻った私に瑠衣斗さんは言った。

「瑠衣斗さんが私の名前を苗字で呼んでいるのもそういう理由ですか?」

「そういうわけじゃないけどさ……なんか女性を呼び捨てで呼んで良いものなのかわからなくなちゃって……年下だし」

瑠衣斗さんは恥ずかしそうに言った。

「別に構いませんよ。翔もあだ名で呼んでるし。同僚なんですからね。あ、でも私はさん付で呼びますからね。位も歳も上ですから」

「う、うん。わかった。りん」

瑠衣斗さんはまた恥ずかしそうに言った。

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