第9話 最年少特殊戦官

「このことを踏まえると、今回第2部隊が襲われたことにも説明がつくとは思いませんか?」

私がみんなに投げかけると、1人手を挙げて聞いてきた。

「でもその話からすると、犯人の目撃されている能力のことについての説明がつきません」

みんなもその通りだと言うように頷いた。

私はゆっくり口を開いた。

「もしその能力を使っていたのが、別の人物だったら、どうですか?」

私が試すように言うと、またもやみんな黙り込んでしまった。

「このように考えると第2部隊を襲った時に透明化の魔法を使わなかった、いいえ、使えなかった理由に合点がいきます」

はあ〜。

誰かがため息をついた。

「で、特殊戦官を殺して犯人に何の得があるの?

犯人に加担している人は何で犯人についていく訳?」

「えーっと、それは———————」

私と瑠衣斗さんは固まってしまった。

「答えられないと言う事は、わからないってことでしょ。なんか偉そうに話してるけどさ、少しの状況証拠から自分が想像した犯人を僕たちに吹き込まないでもらえる?」

「外間くん!それぐらいにしなさい」

近くの人が注意をした。

「話は以上かい?」

辻村司令官が私達に聞いてきた。

「は、はい!」

私達は返事をして椅子に座った。


***


結局、今回のことは保留ということで話がついた。

「あ〜、あの人ムカつく!なんなのあの態度」

私が文句を言うと、瑠衣斗さんが説明をしてくれた。

「あの人は、外間浩太。所属は、本部1〜3区担当の第1部。階級は中尉だから、鹿野さんと同じだよ」

「あの人何でそんなに偉そうだったの?」

「外間くんは、最年少で特殊戦官になったって思っているからね、自分より階級が下か、同じ人にはああゆう態度になるんだ。上の人には凄い礼儀正しいんだよ」

(へえ〜。そんな感じはしなかったけど)

私達が話をしながら歩いていると、後ろから声をかけられた。

「あの、先ほどはウチのバカがどうもすいませんでした」

私がキョトンとしている中、瑠衣斗さんは“いえいえ”と言いながら話し始めた。

「瑠衣斗さん、この人誰?」

私が急いで聞くと、その人が私に近づいてきて言った。

「ごめんなさい。鹿野さんは始めましてね、私は本部1〜3区担当の第1部所属の加藤清美です。よろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします」

私が言うと加藤さんはニコッと笑った。

(本部1〜3区担当の第1部所属と言う事は外間くんと同じ場所だな〜)

「本当にごめんなさい、あのバカにはきちんと言っておくから」

そう言って加藤さんは言ってしまった。

「瑠衣斗さん、さっき加藤さんと何を話していたの?」

私が聞くと、瑠衣斗さんが苦笑いしながらも言った。

「いや、外間くんがまだ誤解しているって聞いて、加藤さんも大変だねって———」

「何を誤解しているの?」

瑠衣斗さんはきょとんとして

「何をって自分の記録」

「まって、意味が分からない」

「え!だからいまだに自分が最年少で特殊戦官になったと思ってるんだって」

今度は私が驚いた。

「違うの?」

私が聞くと瑠衣斗さんはため息をついて、言った。

「何を言っているのだか……今、最年少で特殊戦官になったのは

                    

                    鹿でしょ!」


「・・・・・・え?」




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