3章2話 4月14日 黒髪ロング委員長の胸を転んだ拍子に……(2)
「違う」
「はぁ?」「ほぅ?」
「…………あっ」
「この子は仙波のカノジョじゃない! 仙波のカノジョって、もっと背が高くて、本当に銀髪で、目だって青色の女の子のはずだし!」
バッ、と、俺は即行で立ち上がる。
逃げよう、全力で!
「委員長! 後方のドアを死守しろ! オレは前方のドアを死守する! 深水! 戦闘は任せた! なんとしても仙波からガールフレンドの情報を聞き出せ!」
「了解!」「りょ、了解……っ!」
「雪村……ッッ、やはり反応が速い!」
雪村を突破するなんてできるわけがない。
ここは深水を
「待て! 仙波! 悪いようにはしないからよ!」
「ウソ吐け」
「マジだって! ただ仙波の奢りで焼肉を喰うだけで!」
「あれ? この前はカレーパンで許すって言っていただろ?」
「あれはウソだ」
「早速ウソ吐いているじゃねぇか!」
深水の手が俺に迫る。
が、なんとか躱せた!
あとは白崎の横を抜ければ!
「仙波! あの銀髪の女の子って!?」
「言っても信じてくれないとは思うが、義理の妹だ」
「わかった、信じる」
「本当か!? 白崎も天音もいい人すぎる!」
「でも許さない!」
「なんでさ!?」
まぁ、いい。
白崎が相手なら俺、深水、雪村の3人の中で、一番運動が苦手な俺でも両者無傷で――、
「させねぇ!」
「あっ」
「えっ? ちょっ!?」
「フッ、幸運なるエロスが発動するのか」
恐らく、深水は俺のブレザーを掴もうとしたのだろう。
が、掴んだわけでも、掴めなかったわけでもないのだろう。
中途半端に掴むことに成功して、でも、俺の逃亡の勢いによって手を放してしまった。
背後で行われたことだから、全ては推測の域を出ない。
ただ1つだけ確実に言えることがあるとすれば――、
勢いを殺されて足がもつれ、俺が前のめりになって転びそうになったということだけだ。
「きゃっ」
「えぶ!?」
白崎の女の子らしい悲鳴と、俺のあまりにも情けない声が、ほぼ同時に教室に響く。
結果、俺は白崎のことを床に押し倒してしまい、彼女のかなり発育良好で、やわらかい胸を――、
つい一昨日、去年1年間、ずっと同じクラスで勉強してきた女子の下着姿を見てしまったのに――、
今日はその子の胸まで――、
「~~~~ッッ」
「あっ、ご、ゴメン!? 今のは本気で悪かったと思う! 本当の本当にゴメン!」
耳まで真っ赤に紅潮する白崎。
そういえば一昨日、好きな人にも見せたことない、って言っていたからな。
となると、いまだ誰にも胸を触らせていない、って考えるのが自然な流れだけど……。
ざ、っ、罪悪感がヤバイ! 周り……っていうか深水から見たらラッキーでも、悪いことをしてしまった感じが強すぎる!
俺は慌てて白崎の胸から手を離した。
そして慌てて距離を取る。
「いや……、その……、ッッ、び、っ、ビンタの10発とか20発ぐらいなら覚悟しているし……、その……、えっと……」
「仙波」
「はい!」
「今の、わざとじゃないんだよね?」
「はい、もちろんです!」
「一昨日、一緒にいた2人って」
「パンクファッションをしていた方が実の姉で、銀髪の方が義理の妹です!」
「月島天音さんの方とは?」
「えっ? 関係性の話?」
「うん」
「……文芸部の本を読むんだったら、部員になった方が誰にも文句を言われない。そんな感じの理由でこの前の金曜日、部長と部員って関係になった」
「そっか」
「あっ、はい」
と、そこで白崎は立ち上がる。
「コホン! こっ、今回だけ特別に許してあげる! う、ウチの胸を触ったのも、わざとじゃないんでしょ? っていうか、深水が変なことしなければ、こんなことにならなかったと思うし」
「す、すまない……。助かる」
「悪ぃ……、仙波も、委員長も。少し悪ふざけが過ぎた」
「まったくよ」
頬を赤らめて、満更でもない感じで白崎はどこか拗ねたような
少し幼い感じで頬を膨らませて。決して俺とは視線をあわせずに。
いや、胸を触られて満更でもない、って、そんなふうに見えることがおかしいのは重々承知なんだけど、そうとしか見えないというか……。
正直、嫌われて当然のことをしてしまったから、満更でもない、わけがないのが普通のはずなんだが……。
「つーか、仙波、いつの間にか義理の妹なんてできていたのか」
「また紹介しろって言うのか?」
「そうしたいところだけど……今は割と反省しているから、また今度だな」
「フッ、幸運なるエロスを発動してもなお、その対価になにも捧げる必要がないとは。やはり我が盟友は面白い」
そのタイミングで担任の先生がやってきた。
とりあえず、望未が義妹であることと、天音とキスしたわけではないこと、この2つを次の休み時間まで持ち越すことにならなくて助かった。
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