1章5話 4月10日 意外とリアルにブラコンで、美人なお姉ちゃんと外食へ(1)
登校時は仙台駅から地下鉄に乗れば西に3駅。
国際センター駅を出発して、北に真っ直ぐ進み、並木通りを抜け、5分ほどで、そこに俺たちが通っている私立青葉学園高等学校があった。
しかし今は放課後。
逆に俺は仙台駅に向かうため、荒井行の電車に乗り込んでいた。
乗客はそれなりにいるけど、空いている席も少しはある。そんな中、俺は列の一番端を確保することに成功。しかも隣に誰も座らないという特典付きだった。
アナウンスが鳴ってドアが閉まり、そのまま電車は出発する。
開設10年も経っていない地下鉄だからかどうかは知らないが、比較的走行音もなく快適に仙台駅に進んでいく。
乗車してから、恐らく3分後のことだった。
ポケットのスマホが通知によって振動する。
画面を確認してみると、表示されていた雪村からのLINE。
ヒバリ : 『月島のヤツが――』
ヒバリ : 『仙波悠真の都合がいいなら、ボクは明日の放課後でも一向にかまわない』
ヒバリ : 『――と、LINEを送ってきた』
仙波悠真 : 『ありがとう』
仙波悠真 : 『ちなみにどこまで話した?』
ヒバリ : 『仙波悠真というオレの友人が、お前に会いたがっている』
ヒバリ : 『というところまでだ』
ヒバリ : 『そもそも、オレさえお前の調べ物の詳細を聞いていないからな』
仙波悠真 : 『すまない』
ヒバリ : 『気にするな。隠し事など、誰にもあって必然だ』
ヒバリ : 『万象を理解し合わなければ真の友ではないと
スタンプを送る。
雪村からの既読マークが付いたが、続きのメッセージは特にこない。
ちょうどそのタイミングで電車が仙台駅に到着した。スマホをしまい、グレーを基調にした小綺麗で、まだ割と新しいホームに降り立つ。
地下4階から地下1階に移動するため、まずは吹き抜けで、やたら長いエスカレーターに乗る。こっちの仙台駅はJRではなくて市営地下鉄の方だから、そこまで利用者数も多くなく意外と静かだ。
次に地下1階に着くと、電子マネーで改札を抜け、今度は改札を出て右手にあるエレベーターに。
地下1階から地上2階へ。
ドアが開くと東北のターミナル駅である仙台駅の駅舎。加えて、歩道橋の面積をありえないぐらい広げて、仙台駅西口一帯に建造した空中区画、ペデストリアンデッキが広がっていた。
南北には仙台駅の駅舎よりも延びていて、仙台駅西口の主要なビルには、基本的に全て繋がっているはずである。
厳密に言えば、法的な区分は歩道橋というわけではないらしい。が、そういう類の空中建造物に、夏祭りの時期には屋台がいくつも並び、クリスマスの時期にはツリーが設置される。それほどまでの面積といえば、だいたいの規模がイメージできる……はず。
静寂な地下空間とは打って変わって賑やかで、茜色に染まる地上。
サラリーマンや帰宅途中の高校生や大学生。
バンドマンやおじいさんやおばあさんや観光客。
けっこう通行人のバリエーションは豊かだし、割と人通りが多いと思うが、俺は気にせず人の流れに乗って、JRの方の仙台駅を目指し始めた。
件のペデストリアンデッキを使い2階から仙台駅に入る。
こっちは市営地下鉄と違いかなり混雑していた。が、時間に遅れるわけにはいかない。寄り道しないで、俺は姉さんとの待ち合わせ場所へ。
中央改札前が吹き抜けになっているため、そこには2階から3階まで伸びているステンドグラスがある。
その前には――、
「おっ、悠真」
「悠真さん、今朝方ぶりです」
「お待たせ、姉さん。それと、シーカーさんも」
「いや、こっちも今きたところだし」
なんとなく気になって、姉さんの服装を頭の上から爪先まで確認する
パステルな桜色で、トータルネックのニットセーター。さらにその上からは革ジャンを。下はホットパンツで、靴はレースアップのニーハイブーツ、つまり編み込みで膝上まで丈があるブーツだった。手にはクラッチバッグを持っている。
「う~む」
「どうしたん?」
「シーカーさんが別次元すぎるだけで、姉さんもファッションセンス、普通に普通なんだよな、って、基準を再確認していた」
「失礼なヤツめ。そもそも、シーカーの服だってアタシが用意したんだけど?」
「いや、それはわかっているんだけど……」
今度はシーカーさんの方も見た。
ホワイトに近いクリーム色のニットセーター。ブラックのミニ・プリーツスカート。白雪のような生脚を惜しげもなく晒していて、靴はダークブラウンのローファー。そして亜麻色のクラッチバッグと、細い首からはハートのネックレスが。
「? なにか?」
「注目浴びているなぁ……。いや、いい意味でなんだけど」
「もとが美人すぎるわけだし。まぁ、相乗効果にも限度があるでしょ、って、こっちも女性として自信なくすけど。あと――」
「どうした?」
「実の姉を女性の基準にしない方が賢明な件について」
「それもそうだな」
「えぇ~、少しは躊躇ってよ」
「首に絡むな、胸を押し付けるな」
姉さんは後ろから俺の首に腕を回し、背中に胸を押し付けてきた。
恥ずかしい。当たり前だけど姉さんを異性として意識しているという意味ではない。周りの微笑ましいモノを見るような視線が、という意味だ。
ウザ絡みしてきた姉さんを振りほどく。
イタズラに満足しました、なんて大学院生にはあるまじき顔をしていたが。
「で、どこに行くの?」
「東」
「雑にもほどがあるだろ」
歩き出した姉さんのあとを、俺もシーカーさんも追った。
西口から東口に向かっており、2階から4階まで吹き抜けの道を進む。
「吹き抜け好きだなぁ、仙台駅前は」
「再開発のおかげだねぇ。1日の利用者数約10万人の割に、人口密度がまぁまぁ低いし、なによりも個人的には、デザイン的だと思えるのがベリーグッド。この自由通路に至っては、日の光が入ってくれるのがモアベター」
「そりゃ、横幅が15m以上あるからな。まず他人にはぶつからないだろ。なによりも個人的には人の流れが速くなくて、休憩ポイントが多いのが素晴らしい」
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