1章4話 4月10日 自虐ネタにするぐらい、今どき珍しい黒髪ロングでツリ目の委員長が怒ったようだ!(2)
「あぁ~、もう! センセーも、イジメが起きているわけでもないし、授業中は普通だし、休み時間のことは任せた、って! あと、みんなも絶対、ウチのことを雪村・深水の特攻持ちだと思っているって!」
いつもは強気なツリ目を微妙に潤ませて、嘆くたびに身体を揺らし、黒のサラサラロングヘアも連動してなびいた。
適当に2人のことを無視できないあたり、根は本当に真面目で、委員長に向いているのだろう。
「本当に落ち着け、白崎。雪村と深水相手に真正面から立ち向かうな。闘牛をする時はスルースキルが必須だろ?」
「しぇんばぁ……、なんでお前、こんなヤツらと一緒にいて疲れないのぉ……?」
「まぁ、ウザイけど、イヤにならないから友達やっているわけだし」
「変人たちの保護者やっているから、仙波まで変人と思われちゃうんだぞ? 仙波は本当にまともなのに……」
「だからって今さら友達やめるのも後味悪いじゃん」
「仙波までカノジョできなかったらどうするの?」
「それは大学生になってもカノジョができなかった場合、考えることにしている」
「大学ねぇ……。あっ、そうだ! 仙波は大学、エスカレーター? 外部? あと、理系? 文系?」
「オレは理系だ」
「エスカレーター決め打ちで、後期の中間試験の合計点がいい方」
「誰もお前たちには訊いていない!」
まるで早押しクイズのように白崎が雪村と深水を威嚇する。
「とはいえ、まだ先だろ。考えているのに越したことはないけど、2年の4月の時点で決め打ち、というのも……」
「へぇ、意外。一番先を見据えて物事を進めそうなのに」
「見据えるべき先を、まだ見付けていないからな~。まぁ、割と俺も深水と同じように、自分の得意分野を伸ばすかもな。やりたいことがあっても、才能がなかったら意味ないし」
ここで昼休み終了の予鈴が鳴った。
あと5分で寝落ちとの戦いが始まるのか。
「とにかく! 雪村と深水は女子がいるのに変なこと言わないで!」
「え~、仙波だってオレの発言、引用したじゃん!」
「それはつまりあんたの発言でしょ!」
「あっ、そうだ、白崎」
「んっ? な~に、仙波?」
「ほぅ、声のトーンが刹那より疾く変わったな」
俺は自分の席に戻ろうとした白崎を呼び止める。
「ウチに生物部とか化学部ってあるだろ?」
「あるね」
「そこって図書室にもないような生物とか化学の本、あると思う?」
「えっ? どうだったかな?」
「仙波、生物部や化学部に置いてあるのは、主に実験、部活動の記録だ。専門書もないわけではないが、労力には見合わないと判断する」
白崎が雪村を悔しそうに睨む。
対して雪村は不遜な態度で白崎を笑った。
「なら、心理学部とか哲学部って……ないか。うん」
「絶対にない。どうしたの、急に?」
「調べ物」
「図書室じゃなくて、大学の方の図書館に行けば? 一緒に行ってあげる?」
「いや、なら大丈夫だ。気遣ってくれてありがとう」
「そ、そう? なら、まぁ、うん、どういたしまして」
「すまない。放課後は、人と会う約束をしているんだよ」
「えっ?」
「えっ?」
「もしかして、女の人、とか?」
「あぁ、よくわかったな」
瞬間、前の席から物凄い勢いで、深水が肩を組んできた。
「抜け駆けは万死に値する」
「お前まで雪村のようなことを……ッッ」
「せめてオレたちに一言でも言ってくれれば、減刑の余地だってあったのに!」
「えぇ……、白崎、深水に言ってやってくれ。こういう発言をしているから、女子にウンヌンカンヌンって……」
「そうね、珍しく深水と同意見よ」
「白崎、深水に魂を売ったのか……ッッ」
「仙波、無自覚だとは思うが、お前もオレのようなことを言っているぞ? それと、
「雪村……、信じていたぞ。お前は俺の味方だって」
「……お姉さんなら、うん、セーフ」
「仙波のお姉さんって何歳?」
「22歳」
「交際を前提に紹介してほしい!」
「絶対にイヤだ」
さて、話を戻すがどうしたものか……。
大学の方の図書館は、時間的には朝の9時から夜の9時まで開いている。
これは事実なんだけど、気持ち的に気軽に行ける場所じゃないし……。
「仙波、哲学については保証できないが、心理学については1人、恐らく、大学生ぐらい、少なくともオレ以上の知識を持っているヤツに心当たりがある」
「雪村が他人をそう言うなんて珍しいな」
「あぁ、雪村本家の白銀の女王レベルで勉強ができる、と、そう言えば伝わるか?」
「うん、ゴメン。全く伝わらないけど、それでそれで?」
「そして、それは特に重要ではなく」
「じゃあなんで説明したんだよ……」
「ヤツは部費で大量の書籍を買って、部室に溜めている。まずありえないが、仮に図書室の蔵書とたいして変わらなかったとしても、仙波のオーダーにあわせた本を紹介してくれるだろう」
「それは助かる」
「ヤツに『雪村
『彼はまだ、ボクに勝つつもりでいるのかい? 無駄なことを』
『とはいえ、挑まれた勝負に背を向けるのも、ボクの主義に反する』
『ひとまず座りたまえ。キミの悩みはボクが聞いてあげよう』
『心配には及ばない。ボクが雪村雲雀に負けるわけがないじゃないか』
――と、余裕溢れる態度で協力してくれるはずだ。こちらの手の平の上とも気付かず」
「なんか雪村と同類の波動を感じるんだけど! なんでこの学校の男子は変人ばっかりなのよ!」
「俺を勝負のアイテムとして使うなよ……。あと、逆に煽らないと協力してくれないのかよ……」
「とはいえ、よかったな、仙波。それで、雪村、そいつ、誰? オレたちも知っている?」
「そうだな――。なんだかんだ言っても、オレの
――――
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