第28話
朝、近くの大手スーパーの前を通ると、いきなり赤ら顔で白髪頭の爺さんに話しかけられた。指で地面を何度も指しながら。 「これ、拾えよ?!」 見ると小型犬のウンチがしてある。 どうやら爺さん、そこを通ったら犬のウンチがしてあったから、怒ってずーっとそこに立っていたらしい。 私は今朝はそこをたった今通ったばかりだ。そして連れているうちの犬は中型犬だ。だから、そのウンチはうちの犬のではない。 うちの犬のはもっと大きい。だがそのウンチは、うちの小型犬のするウンチと同じ位のサイズだ。 「それ、私じゃないから。」 「何〜?!」 「それ、うちの犬のウンチじゃないから。」 「何だと〜?!何で拾わないんだよ〜!!」赤い顔が興奮している。 「だから私じゃないの!私、今初めてここ通ったんだから。」 「なに嘘言ってんだ、バカヤロー!!」 「だから私じゃないから!!」 「バカヤロー、みんなそう言うんだよ〜! なに嘘言ってんだ、このバカヤロー!!」 もう何度も何度もバカヤローと繰り返す。「だからそれ、小型犬のウンチ。うちのはもっと大きいの。」 「バカヤロー!!なに言ってんだ。」 一瞬、困った様な顔をしたがすぐに又同じ事を繰り返す。 「拾え!!何で拾わないんだ〜?!」 要は、誰かが犬にウンチをさせて拾わなかったから、それが悔しくて仕方ない。だから はじから、犬を連れた人間にいちゃもんをつけているのだ。 だが、この爺さんは恐らく男には言わない。若い男なんかに言えば、逆に凄い剣幕で文句を言われて、相手に寄っては暴力を振るわれるかもしれない。若くなくても、その男に寄っては大騒ぎをするかもしれない。 だから、ああして女にしか言わないのだろう。爺さん、自分が男だからよくわきまえていて、ああして女に当たっているのだ。 「オイ、早く拾え、バカヤロー!」 「うるせーなー!やってないって言ってんだろう?!何がバカヤローだ。」 「早く拾えーっ!!」 何を言っても駄目。もう無視して歩く。 するとまだ後ろからギャーギャー叫んでいる。その足元には小型犬のウンチ。 そうしたら前方には中年と若い男の二人組がこちらを見ていた。同じ作業着を着た。 そしてそのジジイを呆れ返りながら、二人で馬鹿にした様に笑みを浮かべて、何が言っている。 確かに、あんな所にウンチをさせて、拾わない奴が悪いのだが。 だから、私は散歩用のバッグを持っている。100円ショップで買ったヤツにはビニール袋が大量に入っている。 やはり100円ショップで買ったもので、一番小さなビニール袋が90枚位入ったヤツを愛用している。犬のウンチ拾い袋として最高に適している。 あのウンチをあそこで今朝やらせた奴は、あの袋を買うべきだと思う。 でも、どうせ犯人は分かっている。 あれは恐らく男だ。よく男が手ぶらで犬を散歩している。そして、犬がウンチをすると、サーッと離れて行く。 勿論、ちゃんとにズボンや上着のポケットにビニール袋を入れている男もいるが。 とにかく、今朝はジジイ狂乱に遭遇して、とんだとばっちりを食った。笑 そしてまだ今朝のジジイ編、続きがある。今日は奴等に縁がある様だ? この"犬のウンチに発狂ジジイ"の次には違うジジイに遭遇したから。 今度のジジイは、警察署の向かい側の横断歩道を待っていると、向かい側に二人の男が、やはり青に代わるのを待っていた。警官の、若い男と爺さんだ。 青に変わり、渡る。二人とすれ違う。 真横を、マスクをした灰色頭の爺さんが通る。私を見ない様にしているが、この爺さんは私を見るのが初めてらしい。 これを書いているから、私の事は当然知っているのだが。だから見ない様にしながら気にしている風だ。 だから私が顔を見ると、自分もこちらをチラッと見る。 「これが例の女か。」、みたいな、嬉しそうな、馬鹿にしたニヤッとした様な目付きで。「今見てたね、あのジジイ。」 聞こえる風に犬に話しかける。よく犬の飼い主がやる行動だ。特に欧米人がやる、ドッグランなんかで。 爺さん、それを気にして軽く又見ながら、どんどん横の若い男と歩きながら、会話をする。横の若い男は私の事を、気にしている爺さんに何か情報を伝える。 渡り終えた爺さん達を、まだ何か言っているかと振り返って見てみた。案の定、爺さんが2回程振り返ってこちらを見た。 髪の量は割とあり、丸っぽい顔に、左から右へと分けた七三系の横分け。(中には女分けの様に右から左の男もいるから。) 灰色頭のこの"グレーヘッド爺ぃ"は、この間コソコソと前を歩きながら後ろを見ていたジジイとは違うが、やはりかなり老けていた。マスクをしていて顔が半分見えないが、そんな感じだ。 だからか分からないが、コートを着て、マスクをして、くるりと振り返りこちらを見たその様は、正に変質者の様だった!!
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