第23話

前回に出て来たリンダ、彼女を一度見た事がある。確か1年前、いやもう2年になるが関内周辺でだ。              実はたまにこうした事はあるのだ。彼女だけではない。他にも何人もある。関内や横浜駅周辺でだ。               勿論、夜ではない。昼間だ。何処かヘ行った時に、たまたますれ違ったり、近くを歩いていたりして、何となくあれ?あの人知ってる、と感じる。             勿論当時働いていた時に知っていた全ての女達ではない。日本人でもフィリピン人でも、一部覚えている人間だけだが。      相手も、あれ?と言う顔をして私を見る場合もあるし、口をきいたり、その後何度か会ったりした相手もいた。          だが殆どは、相手が気付いてもそれで終わりだ。基本、余り口などききたくないのだ。 水商売なんてしていた時の知り合いや仲間など、もう関係ないし関係したくないのだ。私はそうだし、恐らく相手もそうではないだろうか?                 余程仲が良かったとか、同じ国から来ている人間同士ならまだ付き合っているかもだが。                  そう、それで私はリンダだと気付いたがそのまますれ違った。彼女は私に気付かなかった。何か疲れた様な顔をしていた。やつれた様な。                 もうあの時とは違う。二十代ではない。彼女ももう五十代だから、ハッキリと顔に皺があった。服装も地味だった。        茶色いダウンコートを着ていたが、はいていたズボンは黒いパンツだった。靴も黒い、あまりヒールが高くないスリッポンだった。 バッグも地味な黒い物で、ブランド物かどうかは一瞥では分からなかった。ロゴだとか何か名前が分かる物は見えなかった気がする。髪の毛は、肩位はあるだろう髪を後ろに1つにして束ねていた。           正直、余り裕福そうには見えなかった。やつれていたし、当然なのだろうが、当時の華やかさは無かった。            だが、日本にあの年でいるのだから、誰か日本人と結婚して居着いたのだろう。あの時の、あの不気味な怪物男で、金持ちの不動産屋とは別れて。             あれはまだバブルの時代の頃だったかもしれない。皆、割と羽振りが良かった。    彼女は、あの当時はいつもギンギラギンな派手な格好をしていたし、年中ブランド物のバッグを抱えて店に入って来た。      正月明けには着物を着て来たりもした。正月は確か、元旦と2日は店が休みだった気がしたから、3日だったと思う。あれは恐らく貸衣装だろう。彼女と他の二人の仲間と3人とで、綺麗な着物を着て来たが。そしてよく、あの怪物男とも同伴していた。      もしかしたら彼女はあのタコ部屋的な寮には住んでいなかったのかもしれない?    たまにいたのだが、マンションに住んでいたフィリピンの娘が。           お客の金持ち爺さんが部屋を借りる。そこに女の子を2、3人で住まわせる。そして彼女達と関係している。           店の方では、良い客だから、大目に見ている。見て見ないふりをしている。     店の、日本人の女の子に聞いて、当時は驚愕したこともある。二人で一人の、その男の相手をすると言うのだ。それをその男に直に聞いたと言うのだ。            その爺さんが自慢したらしい。彼女が場内で付いた席でらしい。ハッキリとは覚えていないが、確かそんな事を言っていた。    だが、要はマンションを借りていて、二人のフィリピン人の女を住まわせていて、定期的に通い、同時にその二人とセックスをすると言うのだ。そして3人で、裸でふざけながらその部屋の中や風呂場を走り回ったりして、キャーキャー言って遊ぶそうだ。     しばらくはそうしてマンションを借りていたらしいが、普段うるさくしたり、普段のゴミ出しだとか何かをちゃんとにしないだとか、夜にたまに大騒ぎをしたりするから、マンションで苦情が続出したとかで、結局解約したそうだ。                そして、その子達はフィリピン人ホステスの中では余り売れてはいなかったらしい。だから今はもう店にはいないだとか言っていた。「嘘〜っ?!」             「いや、○○ちゃん、本当なんだってば!!」               「信じられないよ、そんなの!!」    「それが本当なんだってば!!」     「だって、二人でそんな事をするんでしょう??」                「そう。だから、それが全然平気なんだってさ?!」                「信じられないよー。」         「私も最初はそうだったけど、でも本当なんだよ。色々聞いてたら。」         この話を聞いた時には本当に驚いたから、衝撃が物凄かった。            だから、リンダもそうしてマンションをあの怪物にでも借りてもらっていたのかもしれない?そんな、2Pはしないとしても。    でなければ、あれだけ沢山のバッグやアクセサリーだとかを他の女の子に取られるのではないのか?               当時は皆、小さなバッグやポシェットを大事そうに下げたり抱えたりしていて、その中に稼いだお金は入っていたそうだが。    今は、銀行口座があるみたいだから、たまにお金をATMで下ろしている子を銀行内で見たりするが。              リンダは恐らく、お金は無いが真面目な男と結婚したのだろう。その男の子供を何人か産んで。そして今はもう只のオバサンなのだ。当たり前だが。             そして夜の店では、今はもう違う、もっと若い日本人やフィリピン人等の外国人の女達が働いている。              時代は変わっても基本、同じだ…。    続く       

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