第16話

今日は祭日、成人式の日だ。       私が20歳の時は、もうかなり昔だ。そして私は当時、アメリカのカリフォルニア州にいた。留学していた。           だから成人式に行っていない。良かったと思う。ずっとそう思っている。       何故なら、私が着物を着たら似合わないだろう。顔が合わない。姿は合うのだが。   当時の私は今よりも遥かに細い。体重が48キロ前後だ。そして身長が、165、166センチだ。               よく、もっと高いと思われるが。170センチ位あるだろうと。だか、違う。     しっかりと、背筋を伸ばし、顔や顎の向きをしっかりと指図されて、ピシッと頭を付けて正確に図ったから誤魔化しがない。東京の大きな病院で、健康診断だ。アメリカの永住権取得の許可が出て、大使館から指定された病院へ行った時だ。            私の身長は167センチ無かった。確か、 166.3位だったろうか。       だが、日本人のオジサン連中は私を、170センチはあると言い切ったりする人が結構いる。今はそんな事を言わないが、若い時にはよく言われた。(確かに大きくは見える。肩幅があるのが凄く理由らしい。誰か、美大に行っていた人にそう聞いたが、そうかもしれない?)                だが彼等がそう言うのは何故か?私が170センチかそれ以上はないと困るから。嫌だから。自分が私と同じ位だから。又は小さいから。                  何故なら彼等は皆必ずこう言う。自分は  170センチあると。嘘なのだが。だが自分達は160センチ代では嫌なのだ。プライドだろう。男なら最低170センチはないと、恥ずかしいだとか嫌なのだと思う。    だが、欧米へ行けば分かる。自分達はあちらの男達の頭からポコンと1つだとか、2つ分位は小さいと。             そう、とにかく私は細くてスラーっとしていた。相手が関西人だと、「シュッとしているね!」と言われた。           だからそういう人は着物が似合うそうだ。だから着物の宣伝でも、欧米人を使ったりするのも多々あるのだろう。         顔は似合わないけど体型的にはよく似合う。だが現実的には、本当にそんな事をすれば、物凄く目立つ。             だから廻りが見るだろう。特に当時の日本ならもうそれは大変だ!!日本は何か変わった物を見るといつまでもずーっと見つめるから。                 昔、アメリカ人の若い男に聞かれた。何故そうなのかと。日本に仕事で来ていて、それをとても不思議がっていた。        今は昔程ではない気はするが。だが昔は本当に酷かったから!!だから着物なんて私が着たら大変だっただろう。私の、欧米人に見える顔でじゃあ。             それこそ、中には何か投げつけたり、側へ来て着物を汚して喜んだだろう。してやったり、と。大袈裟には言ってはいない。   何せ昔は、以上にチヤホヤされたり、嫌われたり憎まれたりするのが、欧米人との混血の人間はされていたから。顔があちらに似ていれば似ている程、この不快な思いをするのは増える。                黒人との混血だと、もっと凄かった。バスに乗っていたのを見た事がある。一人席に座っていたが、最初から最後までずーっと下を向いてとてもビクビクしながら、恥ずかしそうに、居辛そうにして座っていた。12歳位の少年で、私は少し年上で、普通の席に座っていた。                 あぁ、可愛そうだなぁ。そう思って見ていた。私もそうした思いは分かるから。   白人の混血のほうが、まだあそこまではコソコソ、ビクビクしなくてすめた。     その子は降りる所にバスが止まると、急ぎ足で素早く、逃げる様に外へ飛び出した。顔は悲しそうに、泣くのを我慢している様な顔付きだった。               だがその子が降りると、廻りの、さっきまで睨みつけたり軽蔑した様に見ていた大人達の中の一人か二人がこう言った。      「チェッ!やっと降りたよ。」、    「汚ねーな〜、黒いのがよー!!」    そう、昭和30年、40年代に日本に産まれると、そうした事は極当たり前にあったからだ。                  だから私は成人式の時にアメリカに住んでいて本当に良かった!!だって、皆が綺麗な着物を着て歩いているのに自分は違うだなんて、やはり悲しいし羨ましいものね。女の子なのに!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る