第13話

この二日間、とても寒かった。今日はそうじゃないから良かった!そんな風に思いながら、朝歩く…。             で、又警察署前の横断歩道で赤信号を待つ。するともう一つの横断歩道を、ファミリーマートからビニール袋を下げた若い男二人が出てきた。私がいる横断歩道へ渡って来て、そこから署へと渡るのだ。         私に気付き、片方が何かを分からない様に気を付けながら言う。逆二等辺三角形の顔をしたあの男だ。つい先日にも数回、あのマンションの方から傘をさして署へと向かいながら、私に気付くと急いで!!傘で顔を隠して歩いて行ったあの子だ。2回程そうしていた。最近はやたらと雨が降るからね!!!   もう一人は体がガッチリして、眉がとても太い五分刈りの様な短い髪の男だ。真っ黒い目をして、人が良さそうな顔だ。性格が良さそうな…。                少し前に、初めて互いに見た時には、向かい側から歩いて来た。ジッと私に注目していたから、興味津々の様だった。       そして、すれ違いざまにこっちの顔をジーッと見た。わざと下を見ながら歩いていたが、そのすれ違いざまにパッと顔をあげて見ると、焦って直ぐに顔を背けた子だ。    初めて私を見た時には、アッ?!、この女が色々と書いてる奴だ!!と思ったんだろうか。綺麗な目立つ犬も連れているし、すぐに分かるから。             で、この二人が今朝はファミマから出て来て、チラッとこちらを見る。       逆二等辺三角形がかすかに笑いながら何か言うと、相手も何か返事をする。彼等はきっと最初だけは相手を見て、後は見ないで話すんだね。そうすれば、その相手が分からないと思って。だけど、こちらには何故か簡単に分かる。                 そうして、自分達は分からない様にして?!、人の事を話すので、私が聞こえる様に嫌味を言った。聞こえているが、無視する二人。でも嫌そうだ。特に逆二等辺三角形が。   五分刈りみたいな子が持っているビニール袋は、割と沢山入っていた。インスタントの焼きそばみたいなのが2つと、他にも何かが。「ねー、あんた結構食べるんだね?」   どんな反応をするんだろう?何となく、一寸話しかけてみた。驚き、顔を見て困惑している。だけど黙って無視して、青になると急いで渡って行った。            「あぁ、そうですか?」、「僕、意外と食べるんですよ。」、だとかをにこやかに言えば感じが良いが、きっと若いからそこまではできないのだろう。でも少食の男よりも、個人的には、食べる男の方が好感が湧く。余り大食いだと嫌になるが。            そしてこの青年に話しかけたら、横にいた逆二等辺三角形、ニトヘンがムカムカした様な顔をしていた。やはり神経質なタイプだな?自分が気に入っている女、その入り浸っているフィリピン人ホステスには優しくて良くても、学校にいた頃にはもしかしたらいじめっ子だったりしたかも…。         相手の女も、若いし精力があるからセックスフレンドとして喜んでいるだけで、内心は何とも思っていなかったりして?!まぁ、どんな相手でも、自分にさえ良ければ良いし、気に入る場合もあるけど。         あんなイライラした恐い顔をしていると、悪いが、(何故か?!女が上での)性行為中の、悶絶している顔がつい想像してしまえた。うわっ、気色悪い!             もうっ、自分が悪いんだよ?!毎日私が犬を散歩するんだから、会う時は会う。最近は元に戻り、皆又見なくなり、ヒソヒソ話さなくなったのに。              でも、ホステス宅に年中泊まって朝出勤しているから仕方ないのかも。骨抜きにされた、そうなった男なのだろうから。      昔からよくこんな事を言う男達がいたからね。あの女達には皆、骨抜きになる。お金や結婚の為、後は物凄く(男並に)セックスが好きだから、簡単に股を開いてやらせると。嫌らしいし馬鹿にした言い方だけど、よく聞いた。                  私は、割と仲が良かったし、たまに席に呼んだりしていたけど。あっちも結構話しかけてきたりしていたね。           例えば一度、帰り際に、私がイライラしていたら、彼女達の中でも指名がトップクラスの子が聞いてきたことがある。       「○○、ね〜、どうしたの〜?何怒ってるの〜??」               「エーッ?!」           「○○、何怒ってるのー?凄く顔、恐いよ〜。」                「あぁ!!もう頭にくるよ、今日の客。」                 聞くから話す。変な客のテーブルについて、下らない事を言われたり、嫌なことがあったと。そんなのは水商売をしていたら何も珍しくはない。良い時は良いし、楽しい。その逆も勿論ある。              するとこの彼女がこうアドバイスをしてきた。                「○○、駄目!そんなの気にしなーい!!」               「そんな事、無理だよ?!」       「駄目!良い?男、みんな馬鹿。日本人の男、みんな凄く馬鹿。だから、凄く簡単!!「何が簡単なのさ??」」        「良い?男、みんな赤ちゃんと同じ。男、赤ちゃんと仔犬、仔猫、みんな一緒。」   「何が同じなの?!」          「赤ちゃん、泣いてる。泣かない!って怒る。赤ちゃん、もっと泣くの。だから、怒らない!優しくする。赤ちゃん、黙る。赤ちゃん、嬉しい、もう泣かない。だから、男変な事言う、馬鹿。でも怒らない!!気にしない、赤ちゃんと同じ。だから優しくする、話聞く。ニコニコする。男、嬉しい。」   「そんなの、無理だよ!!そんな事、思えないもん!」               「駄目、するの!同じ、男ね、赤ちゃん。同じ。いつも思うの。そう思う、そしたら慣れる!すぐ平気!!」           「慣れる?」              「そう。慣れる。だから、平気。だから、私怒らない。○○も、できるよ!!!そしたら、凄く簡単。」             確かにそうだ!男は赤ちゃんと同じ。だから世の男を、皆女が、手の平に乗せて転がすだとか言うのだ。             普通は幼少時からそれを見ているのだ。母親が父親にするのを。だが、うちにはそんな男がいなかったから、分からないし、分からなかったのだ!!             そして、恐らくは今も、分からないのだ。只、水商売を何年もしたおかけで、少しは分かっているかもしれない?又、分からないと損をするのだ…。            そうして、基本的にはそうした感覚で接すれば良いし、上手くいくのだろう…。    fin 

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