第55話

「さくら」

「何?」

「屋台が出てるなんてことはないよね?」

「まさか。だったら、気付くでしょ?」

「確かに」


屋台と言えば騒がしくなる。

そうなると、嫌でもわかるか・・・


「それにしても・・・」

「何?泰道くん」

「照れくさいな・・・」


少しの間があった。


「私だって、年頃の女の子だもん。男の子とこうして歩きたい」

「僕でいいの?」

「うん。負けとく」

怒る気力もなかった。


まあ、夢を実現できたのだから、いいとしよう・・・


他愛のない会話をしながら、中庭に着く。

あっという間だ。

当たり前だけど・・・


アリゲーターのダイルが、日向ぼっこをしている。(と、思う)


千夏さんが、読書をしている。

こっちをみて、微笑んだ。


さくらは、ウインクをして返していた。


今日は少し、平和な気がするが・・・

気のせいだろう。


「泰道くん、こっちだよ」

「えっ?」


中庭の横に小さな道がある。

気がつかなかった。


「狭いから気をつけてね」

「うん」

さくらがしがみついてくる。


それだけ、道幅は狭い。

そして、通り抜けた。


「泰道くん、ここがデートスポットだよ」

「えっ、ここは?」

見渡して、驚いた。


小さなプールが、そこにはあった。

小さいと言っても、学校にあるプールだが・・・


育てるように頼まれていた、イワトビペンギンのQちゃんがいた。

すっかり、忘れてた。


「あのう・・・まさか」

「うん。そのまさか。君を特訓します」

「何の?」

「泳げるように」

はかられた。


「泰道くん、泳げないでしょ?」

「失礼な。10メートルは泳げるわい」

「それじゃあ、ダメ。25メートルは泳げるようになってもらいます」

「水着持ってない」

「さっき、買っておいた」

トランクスの水着を出された。


緑色。


「さくらは、どうするの?見ているだけ?」

「手取り足取り教えます」

「その格好で?」

「まさか、水着着てきてるよ」


さくらは、制服を脱いだ。


いや、さすがにまずいって・・・


やはり、水着姿だった。

青のビキニ。


「驚いた?」

「ああ」


しかし、ここの地図にはプールはなかった気が・・・




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る