第54話

「でも、僕は服・・・」

「大丈夫。そのために、服を買いに行ったんだから・・・」

「えっ?」

「今、着てるでしょ?それでいいよ」

いいと言われても・・・


「嫌なの?」

睨みつけてくる。


「でも、デートといのは、待ち合わせをして行くもので・・・」

「そんな時間は、もったいない。さあ、行こう」

「どこへ?」

この辺りは、遊技施設はない。


スカートでは、バイクに乗りにくい。


「ピクニックだよ」

「ピクニック?」

「うん」

「じゃあ、そのカバンには?」

「エヘヘ」

まあ、だいたいわかるが・・・


「私も、男の子と腕を組んで歩くの、夢だったんだよ」

「以前の彼氏は?」

「そこまで行く前に振られた」

笑いながら答える。


女の子のほうが、切り替えは早いようだ。


「で、ピクニックって、どこへ行くの?」

「中庭」

「中庭?」

「うん」


それって、デートでも、ピクニックでもない気がする。

口にはしないが・・・


「でも、中庭って、あそこだけじゃないんだよ」

「まさか。隠し階段があるとか?」

「ゲームじゃあるまいし、違うよ」

「・・・そう・・・」


僕とさくらは、ほぼ同身長。

見上げる事も、見下げる事もない。

同じ目線。


それだけに、見透かされている気がする。


「ミャー」

ポチが来た。


「ポチ、今日は泰道くんとデートだから、またね」

軽く手をふる。


フクロウの竜、

コモドドラゴンのひとくん

ゾウガメのファント、

インコのパンナ・・・


珍しそうに、僕たちを見ている。


中庭には何がある?




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