第56話

「さくら」

「何?泰道くん」

「ここの資料には、プールはなかったような」

さくらは、少し考えた答えた。


「プールを載せると、やましい目的で来る人や、来なくなる人がいるから、

載せないように、してるんだ」


詐欺だ。


「じゃあ、泰道くん・・・」

「その前に、さくら」

「何?」


さくらを、まじまじと見てしまう。


もしここで、「本当に女の子だったんだ」と言えば命が無いので、

言葉を選んだ。

その時間、10秒・・・


「さくらは、着やせするタイプなんだね」

「うん。よく言われるよ」

「3サイズは?」

思わず出てしまった。


「上から86・58・85」

「教えてくれていいの?前、嫌だって」

「もう、君は私の大切な、お友達だもん。それくらいはね・・・」

ああ、お友達ね・・・


「で、さくらは泳げるの?」

「うん。出ないとコーチはしないよ」

「あっ、そう」


覚悟を決めた。


「泰道くん、少し待ってね」

「うん」


さくらは、水泳キャップを被り、タオルを用意した。


「泰道くん、覚悟してね」

「もう、出来てます」

「よろしい」


笑顔で言わないでくれ。


「泳げるようになったら、ご褒美あげるから」

「何?」

「キスしてあげる」

「頼む」


さくらは驚いた。


「嫌がらないの?」

「うん。それを楽しみに、がんばる」

「わかった。私も楽しみしてるね」


なぜ、頼むと言ったか。

絶対に、泳げるようにならない自信があるからだ。


でも、少しはがんばろう。




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