第13話

今、僕がいる「かすみ静養所」は、ロの字の形になっている。

中庭があり、そこにはたくさんの入居者がいる。


「さくら、僕は何もしないていの?」

尋ねてみた。

「ここの生活になれたら、してもらうわよ。それまではくつろいで・・・」


それならばと、お言葉に甘える事にした。


中庭には、大きな池がある。


「まさかね」

不安がよぎる。

その不安は的中した。


水の中から、一頭の動物が、現れた。


「やっぱ、ワニだ」

ワニが、這い上がってくる。


「驚いた?泰道くん」

コモドドラゴンの後なら、ワニなんてかわいいものです。

驚きません。


「かわいいでしょ?ダイルって言うんだ」

「ダイル?」

「うん、クロコダイルのダイル」

僕は、ワニを見て言った。


「さくら、あれはクロコダイルではなく、アリゲーター」

「そうなの?どう違うの?」

「歯」

「そうなんだ。まっいいや。とにかく、ダイルもよろしくね」

アバウトな・・・


「さくら、許可はとってるの?」

「もちろん」

Vサインをする。


海外でこれをやれば、犯罪なんだよな・・・


「ここは日本だよ」

「知ってるけど・・・」


さくらは、微笑んでいる。


「ところで、僕以外の面倒はいいの?」

「うん。君の担当は、私だから・・・」

「どうして?」

「ここへ来る時、アンケートに答えなかった?」

確か、やった気がする。


「それで、私と君がマッチしたの?」

「男性の方はいないの?」

「うん。女性の方のほうが、ケアにはいいんだって・・・」

「そう・・・」


淡い期待はしていないが・・・


「さくらは、17歳だよね?」

「うん、そうだよ」

「血液型は?」

「どうして?」

「いえ、いざという時のために・・・」

「B型だよ。泰道くんは、O型だよね?」

「うん」

「相性いいらしいよ」


占いで決めないでほしいが・・・


「それだけじゃ、ないけどね」

さくらの笑みに、救われた気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る