第3話 飛ばない春告げ鳥

 白雪宮しらゆきのみやは、昔から短く涼しげな夏と長く厳しい冬、特に大量の雪で有名だった。そんな宮にある七の都有数の名家、淡城あわぎ家の一人娘は、春告鳥の名を冠していた。

 「…鶯姫様、初めまして。本日よりお仕えさせていただきます、鶴見雛つるみひなと申します。よろしくお願いいたします」

 鶯の部屋の戸を開けた少女は、そう述べて頭を床につけ、お辞儀をした。

 「…表を上げよ。一つだけ、そなたが守らねばならぬことを言い渡す。私には、何があろうと術を使うな」

 雛の驚いたような顔を確認し、鶯はさらに続けた。

 「私は世界に一握りしか居らぬ特殊な身…信じて欲しいのでな、見せたくはなかったが、そなたは女人であるし、見せるとしよう」

 彼女は勢いよく、長い髪で隠れていた顔の右半分を晒した。雛のはっ、と息を呑む音すら聞こえる静寂が部屋を覆った。

 その頬には、点々とした火傷の跡と、生々しい大きな傷痕が残っていたのだ。瞳も唇も美しく、恐ろしいほど整った顔立ちに対して、それはとても醜く、禍々しくさえ見えた。

 「…普通は癒術で治せる傷だが、私のものは無理だ。私は世界でも少ない特殊な身体ーーー「反術体質」の持ち主なのだ」

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