第12話
ちょちょちょ何、人の腰触ってと言うか完全に撫でてるだろ。いやでもぎりぎり尻触ってないからこれセーフになるのか?いやそれにしては手つきがいやらしいだろ。圧迫面接の次はセクハラかよ。会社ならとんだブラックだなおい。
内心の俺の動揺を他所に、イケメンの笑顔は変わらず爽やかだ。
「引き締まった身体してるね。何か運動してるの?」
「り、陸上・・・短距離やってます」
「へぇ、いいね」
と言いながら彼は俺の顔をまじまじと見つめた。
ちょい、両手がまだ腰触ってるから距離すげぇ近いんですけど。てか、手ぇ!!
「君、アルファにしては__・・・、優しい顔立ちをしているね」
それ要は地味って事だろ。
「でもまだまだ若いし。十年後大化けしそうだよね、将来が楽しみだな。んー、でもまだ未成年なんだよねぇ、残念」
と一人勝手に納得しながらイケメンリーマンはようやく俺の腰から両手を離すと、胸ポケットから革製の名刺入れを取り出し、綺麗な仕草でこちらに名刺を差し出した。再び近付いて俺の耳元でそっと囁く。香水だろうか、爽やかだけれどぴりりと辛口でもある香りがふわりと鼻をかすめた。
「二十歳になっても相手がいなかったら考えてみてよ。__でも、そういう事抜きでいいんだったらいつでも連絡して。俺オメガだから身体の相性もいいと思うし」
え。身体?相性?そもそも___、
俺は彼の数々の爆弾発言で一気に身体の温度が上昇した。
「えっ、なっ・・・、お、オメガぁあ!?」
俺の視線はたった今もらった名刺と彼の顔をせわしなく往復した。彼が勤めているのであろう会社の名刺には、俺でも知っている大企業の名前と、彼の名前の上に「課長」の役職が付いている。こんな若いのに大企業でもう課長ってすげぇエリートじゃん・・・ってそれだけじゃない、エリートで顔良し背も高くスタイル良しのこの人がオメガ!?アルファの間違いじゃないのか?
「いやー、よく間違われるんだけどね、俺は正真正銘オメガ。子供が欲しいからもう身を固めたいんだけど、えり好みしている間にもう30歳になっちゃったんだよね」
イケメンはからからと笑うと、ふと思い出したように後列を見、結構しゃべりすぎちゃったね、とつぶやいた。
「じゃ、次の人待ってるし、これで」
あっけにとられている俺の横を通り過ぎざま彼は俺の腰にぐいと手を回し、再び耳元で囁いた。
「考えといて。歳離れちゃってるけど俺結構お買い得だと思うよ、色々教えてあげられるし。いろんな意味でね。」
そのまま何事もなかったかのように歩き去っていくイケメンの背中を、俺は赤面したままただ茫然と見守る事しかできなかった。
キザか。あれがプレイボーイと言うやつか。いやお前は本当にオメガかよぉおおおおお。
真性アルファの俺でも今まで言った事ないと言うかこれからも一生も言えそうもない何やかんやな殺し文句の数々をあっさり言いやがってぇぇええええ。
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