第10話
射殺されるんじゃないかと言うくらい勢いのあるオメガ女性の視線に恐れおののいていると、キリっとOLさんに「いくつだったっけ?」と優しく聞かれ思わず彼女が仏に見えた。しかし「17歳です。高校生です」と答えた途端、「わっかー!!」とゴレンジャー5人衆に驚かれ気分が再び急降下する。
だから見りゃわかるじゃん。女性の集団ってなんで一目瞭然の事を全員で大げさに再確認するかな。年上のキレイなお姉さんは好きだけど正直差がありすぎて話にならないじゃん。歳の差ありすぎても寄ってきたのはそっちなんじゃ・・・、いや、自分の意志で寄ってきたわけじゃないんだよな。はい、これは全部俺のせーい。
「高校はどこに行ってるの?」再びキリっとさんからの質問に、テンションを立て直した俺は「都内の〇〇高校です」とにっこり愛想よく返答すると
「すごーい、結構進学校じゃない」「さすがアルファ!」「え、将来東大か京大?」「官僚にでもなる予定なの?」「医者?」
とものすごい勢いで女性陣が食らいついてきた。心なしか目が爛々として鼻息が荒い。俺は迫力に押されて思わず一歩後ろへ下がった。
なんなんだよいきなりやる気出して、年齢行った時との反応真逆じゃん。
こえーよ。何にどこにいつスイッチが入ったんだよ。
「し、進学はするつもりですけどまだはっきりやりたい事が決まってなくて」としどろもどろ答えると、「大学も決めてないの?もう高2なんだからそこらへんは考えておかないと」だとか「なんとなくで文系行ったら将来営業しかできなくて苦労するよ。手に職系を考えなね」なんて進路指導の先生みたいな事を言われた。なんとなく女性陣はがっかりしているように見える。
意味不明で怖ぇぇえ。だから今の受け答えのどこに意気消沈する要素があったんだよ、と心の中でドン引きしていると、オメガ女性が
「ご兄弟はいるの?」と聞いてきた。
「いや、俺一人っ子です」
「ふうん。長男なんだ」え、またテンション下がった?どこの部分で?
「言いづらかったら無理にと言わないけど、あなたとご両親・・・__両親ともいるのよね?__の既往歴を聞いていい?」
両親がいるかって、あ、離婚してるかどうかを気にしてるのか。
「親は二人ともいますけど。・・・既往歴ってなんでしたっけ」
「今まで入院するような大きな病気やケガをした事がないかって事なんだけど」
「ええ!?えー、俺昔から健康優良児で入院した覚えないっすよ。親からそんな話聞いたこともないし。両親の事はそこまで分からないけど__」
「学校の健康診断で問診票書くでしょ、あの時の既往歴を思い出してくれれば」
健康診断んんん?俺の個人情報健康かどうかまでいるの!?
若干引きつつ、昔の記憶をたぐり寄せると、健康診断のカルテがぼんやり浮かんできた。あー、なんか書いたな、そういや。「親や三親等で以下の病気にかかった人はいますか?」みたいな質問で、ガンとか糖尿とか色々書いてあって母親に聞いたら両親はもちろん母方父方の親せきもいない、とか言ってたな。
その通り答えると、再び女性達はなんだか元気になった。まあ、番になる俺の健康状態は・・・心配になるのは分かるような、え、もう気にするの早くない?って気もするような・・・。
その後、両親の種別を聞かれ(二人ともベータと答えた)、祖父母の有無を聞かれ(皆亡くなっている)、リーマンをやっている父親の勤め先まで聞かれ(某大企業名を答えたらまたもや女性陣が色めき立った)、思わず「こ、ここまで聞くんすか」と非難を込めて聞いたら、オメガ女性以下女性陣全員皆すごく真剣な瞳で頷くもんだからそれ以上何も言えなかった。
父親と母親の事まで気にするのか。女性ってこぇえわ。
これだけさんざん俺の個人情報を提供したにも関わらず、女性陣全員の答えは、
「やっぱり若すぎるしねぇ」で断られ、俺は今までの緊張も相まって膝からその場に崩れ落ちた。立ち去ろうとした女性達は慌てて俺に駆け寄り声をかける。
「やだ、大丈夫よ、若いんだからこれからいっぱい出会いがあるって!」
「健康で元気なのが一番だから、ね!」
じゃあアレコレ聞くなよぉぉおおお怖いよ本気で女性って。番になるのに見た目やフィーリングだけが重要じゃないってかぁあ。そもそもこんだけ長い事一緒に喋って俺のフェロモンに相当あてられてるはずなのにメンタル鉄壁かよ現実そんなに大事かよ。理性全開って言うか超現実的って言うか、女こぇえよぉぉおお。
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