第9話
おお、こちらも珍しい希少種オメガ。
思わず彼女をまじまじと見つめると、他の女性達よりも頭一つ低く華奢な体型の彼女は一歩前に出て、俺の顔を真正面からしっかり見つめながら
「初めまして」
とデパートの受付嬢のような一部の隙もないきれいなお辞儀をした。こちらも思わず姿勢を正し
「は、はじめまして」
と深々と一礼する。揺れるおかっぱの艶やかな黒髪と切れ長の瞳がきれいな人だ。
うげぇ、オメガ相手って緊張が半端じゃない。
他のオメガバース国では、オメガはアルファ、ベータの他の種よりも格下とされる。外見や能力が他の種より劣るものの、生殖能力だけは強いので牛や豚のような家畜扱いされるからだ。それもひどい話だけれど、しかしここ日本オメガバース国では違う。オメガはアルファが発情期中は100パーセント妊娠する事ができるので、現在少子高齢化を世界ぶっちぎりで驀進中のこの国では救世主扱いされているからだ。アルファ、ベータより子供手当と産休育休期間の倍額倍増はもちろんの事、税制優遇、店へ入ればオメガ割引、誕生日にはディ〇ニーランドとUS〇の招待券が届き、バスにはシルバーシートならぬオメガシートが用意されているのだ。オメガ様様なのである。
そのような国の後押しもあり、オメガのアルファに対する審美眼は富士山よりもエベレストよりも高い。確かに100パーセント子供を作れてしまうのだから、伴侶選びは子供の為にも慎重にならざるを得ないのは分かる。分かるが・・・。
俺は思わずおかっぱオメガさんから顔をそらした。先程から彼女の視線が尋常ならざるほどきっつい。両目をひんむいて俺を見つめてくるその視線が親の仇かというくらい俺の全身にぐっさぐさと突き刺さってくる。
こぇえええええ
多分、いや分かりませんけど前世の宿敵とかじゃないです、ごめんなさい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます