第2話
お前のせいだこの野郎と言う腹立ちもあって、心配そうに肩におかれた手を振り払い(やっぱり山田だった)、俺はダッシュで廊下を駆け抜ける。心なしか身体全体が熱い。頭もぼーっとして来た。
秒かよ。もう来んのか。どれだけ抑制剤すごいんだ。逆に怖いわ。
と、言う事はもう周りにフェロモンまき散らし状態って事だよな。
俺はスピードを下げないまま教室に飛び込むと、携帯と財布だけつかんでディパックに投げ込み、それをひっつかんで部屋を飛び出した。何か言いかけた友達や驚いた顔のクラスメイトをガン無視して彼らをみるみる引き離し、ぶっちぎりで校内を駆け抜け校門を飛び出す。中学・高校と部活で陸上(短距離)を真面目にやっておいて良かった。何事にも無駄はないって本当だ。鈴木感激。
とりあえずこの場から逃げて早く家に帰るんだ。即効で抑制剤を飲まないと。学校には帰宅してから電話したら良い。事情を伝えたらわかってもらえるだろ。
今までアルファの先輩達や病院の先生にさんざん脅かされていた。ヒートが来るとそれはそれはもう恐ろしい目に遭うのだと。アルファのヒートは性的フェロモンをまき散らし、特定の
いやだ。まだぴちぴちの17歳だぞ。「あんな目」には絶対に遭いたくない。
俺は猛然と街中を走りながらいつも利用している最寄り駅へ向かおうとして、ふと速度をゆるめた。
いやいやいやこの状態で電車なんか乗れないだろ。わずか二駅だとしてその間密閉状態なんて、ホラー映画によくある地下鉄に乗ったら自分以外全員ゾンビだったってやつだわ。ジ・エンドだわ。
今日は走って帰ろう。二駅分なら大した事はない。
そう決めて、駅には向かわず途中で道を曲がり足の回転速度を上げた。
しかし俺はヒート、つまりフェロモンの漏れの凄さをナメていた。
十字路の交差点に差し掛かり、赤信号で仕方なく信号待ちをしていると、右の通路から左から後ろから前から、20から30代とおぼしき男女の集団がこちらに向かって猛然と走って来たのだ。ある者は200m以上遠くから、スーツとハイヒールと小脇にでかいビジネスバッグを抱えてと言う三重苦もなんのそのの100m走金メダリスト真っ青の素晴しいフォームで、ある者は休日だったのか戦利品とおぼしきトイレットペーパーとティッシュボックスのパックを両脇に下げロングスカートを翻しながら、ある者は散歩中の犬(シェパード)と共に、犬に勝るとも劣らぬありえない俊足で、ある者は雑居ビルの扉をバン!と開き、開口一番
「待てやおらぁあぁああ!!!」
ぎぃやぁあああああゾンビ集団に見つかったぁあぁあ
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