第10話

 紅樹魔界こうじゅまかい側の赤土町あかどまちの突出した場所には聖教会せいきょうかい白銀はくぎんが共同で運営する魔界緩衝所まかいかんしょうじょがある。

 魔界緩衝所まかいかんしょうじょ紅樹魔界こうじゅまかいから人界じんかいへ向かう人や物を浄化する目的が有り、赤土町あかどまちが定める値以上のに汚染された人や物はそこを通りを浄化しなければ赤土町あかどまち内へ入ることが認められない。


 紅樹魔界こうじゅまかいから土領つちりょうを守る赤土町あかどまちにはの汚染を計測し数値化する計測器がある。

 存在も不確かな人知を超えた謎の領域〝天界テンカイ〟の技術で作られている――らしい計測器は天使テンシを通じ、土田家つちだけが購入したと噂されている。


 紅樹魔界こうじゅまかいから赤土町あかどまちに帰ってきた太朗たろう魔界緩衝所まかいかんしょうじょへ入り受付嬢の指示に従って荷物を預けた後「銭湯で身体を浄化してきてください」という指示どおり、銭湯の更衣室へ向かった。


 荷物を預けて盗まれる事や破損される事などを危惧しない程、他者を妄信できないが冒険者との間に強固な信頼関係を築きながら運営している白銀はくぎんを利用するにはある程度の信用は不可欠である。


 更衣室で服を脱ぎ、大浴場へ入った太朗たろうは桶に汲んだ温水で身体を洗い流し、汚れを落とした後、広い湯船に浸かり、疲れを癒した。


 冒険を終えて聖水のお風呂を楽しむ冒険者アドベンチャーたちと情報交換を行いながら身体を清めた太朗たろう赤土町あかどまちへ帰るため、大浴場を出た。

 貸し出されている布で身体を拭き、貸し出されている簡易的な衣服を着た太朗たろうは荷物を受け取りに赤土あかど側出入り口へ向かった。


 預けていた荷物を返され「納品された依頼品の鑑定は翌日に終わりますので後日、白銀はくぎん赤土あかど支部へ来てください」と赤土町あかどまち側の受付嬢に言われた太朗たろうは着替えた後、銭湯の利用料と浄化料金を支払い、借りていた服や布を返して赤土町あかどまち側の扉から魔界緩衝所まかいかんしょうじょを出て宿舎へ帰った。


 翌日、白銀はくぎん赤土あかど支部を訪れた太朗たろうは受付嬢から「納品された依頼品は問題ありませんでした」と告げられ、報酬金が渡された。


 白銀はくぎんは依頼者や冒険者アドベンチャーと強固な信頼関係を前提に運営されている組織であり、依頼者から報酬金が支払われる前提がある事から、品質に問題が無く、お金が用意できたなら冒険者アドベンチャーへ早々に報酬が支払われた後、依頼者へ依頼品を渡し、お金を受け取る。


 「依頼者が報酬を支払わず逃げたから」などと冒険者アドベンチャーに損を押し付けない運営姿勢が多くの冒険者アドベンチャーから好かれ、登録人数が最大の冒険者同業組合アドベンチャーギルドになった。

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