第3話

 中学級に進学できず学園を卒業した太朗たろうまことさんが暮らす黒土こくど治安部隊の宿舎で雑用を行う対価に衣食住を提供されている。


 生活に慣れた頃、まことさんから「将来の事、ご両親へ伝えたのか?」と言われ、両親や故郷の人たちの期待を裏切った負い目から躊躇していた手紙を書き始めた。


 戦技スキルを習得できず進級できなかった失態を謝り、衛兵のまことさんに融通してもらって首都にある治安部隊の宿舎で雑用を行いながら衛兵の皆さんの好意で鍛えられている日常を記し、闘士ウォーリアを諦めない意思を書き、帰らない事を謝り、家族の健康を願い、締めた。


 時が経ち、届いた返信にはたくましく順調に育つ次郎じろうの自慢話が書かれていた。


 『家を継ぐ者は居るのだから、帰ってきても居場所は無いぞ』などと暗に『実家を頼り帰ってくるな』と言っている様にも取れるが『こっちは気にするな、返ってこなくて良い』と背中を押してくれたと思えた。


 治安部隊の個性的な人々から様々な事を教わる日々は充実している事、傲慢だった心を見つめなおし、反省する機会や環境に恵まれている事、思い切って戦技スキルの習得を諦め、能力値ステータスを高める鍛錬を始めた事、能力値ステータスが高くても技術で劣り、衛兵の皆さんには敵わない事、など、沢山の出来事や思いを手紙に記した。


 郵便業者に依頼し、実家へ手紙を出した太朗たろう闘士ウォーリアで頂に至った時、実家へ帰ろうと決意する。

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