第2話

 期待外れな結果で故郷へ帰る程の強心を持たぬ太朗たろうは自身の高い能力値ステータスを誇り「教え方が悪かったから」と考え、戦技スキルを習得できなかった理由を他責した。


 都市の中では比較的、治安が悪い区域で出会った青少年から「戦技スキルを持たないよ、戦技スキル至上主義を覆さないか?」と提案された太朗たろうは「金剛こんごう(組織)に入らないか?」と勧誘された。


 戦技スキル至上主義の闘士ウォーリア社会へ反感を抱く者たちが集まった〝金剛こんごう〟へ「入る」と即決はしなかったが仲間を見つけた太朗たろうは青少年に連れられ、金剛こんごう集会所アジトへ向かった。


 治安部隊の衛兵たちに取り囲まれた金剛こんごう集会所アジトを視認した青少年から「逃げるぞ」と告げられた。


 危険を察知し、早々に逃げた青少年と異なり、状況を理解できず衛兵に捕まった太朗たろうは「まだ、組織の一員じゃない」と無実を主張した。


 衛兵のまことから『』の説明を求められた太朗たろうは罪から逃れたい一心で、生い立ちや青少年との出会いを告白し、罪から逃れようと欲しになった。


 異常な適性値アプティテュード(全てSランク)だがスキルを習得できず教師を恨んだ末、反社会勢力へ加わろうと考えた事を説明し「考えただけで、所属はしていない」と強く主張し、慈悲を求めた。


 静かに話を聞いていた衛兵(壮年男性)から「付いて来い」と言われ、小さな部屋に連れられた太朗たろうは「俺の名前はまことだ」と告げられ「太朗たろう……です」と自己紹介を行い、二人だけの密室でまことと対面した。


 「俺の適性値アプティテュードはAランク(総合評価)だが進級試験の際、弱い戦技スキルしか使えず進級できなかった」と語り始めるまことから「努力が実らず君のように文句を言っていたが『闘士ウォーリアに拘らなければ大成する』と恩師から告げられた」過去を告白された。


 まことが「闘士ウォーリアは妥協しながらも、学んだ経験に固執した俺は王都の人々を守る衛兵になった。『闘士ウォーリアに成れぬ落ちこぼれが衛兵になる』などと世間は言うが、衛兵に成ったことを後悔はしてない」と自慢げに語った後、「……まあ、最初は悩んだが……」と補足された太朗たろうは緊張が和らいだ。


 「闘士ウォーリア以外にも道はあり、能力値ステータスが高い事は戦いに限らず優れた証だ。君の中で闘士ウォーリアに成るは否定しがたい事かも知れないが、拘り過ぎて視野を狭めるのは良くない」


 軽く息を整え「と、ここまでは俺の経験談だが……、俺と君は違う。戦いに関する能力値ステータス適性値アプティテュードがBランクの俺と違い、君は未知数、Sランクだ。大昔の闘士ウォーリア戦技スキルを使わず魔物マモノと渡り合っていたのだから『戦技スキルが使えないから』だけで闘士に成れないと決めつけるのは視野が狭い」


 「その証拠に」と言いかけ、自分の首から外した首飾りを見せるまことから「これはSクラス相当のステータスを要求する代物だ」と告げられた太朗たろうは希少なSランクの道具を衛兵が持っている事に驚いた。


 「俺の祖先、大昔に活躍した闘士ウォーリアが付けていた首飾りだ。首飾りに相応しい男に成りたくて闘士ウォーリアを目指していたし、衛兵に成った後も鍛え続けたが未だに到達していない」


 「俺には無理だったが未知数な君なら出来るかもしれない」語られた太朗たろうは「戦技スキルがなんだ。大昔は無かったんだ。昔から魔物マモノが変わらないなら、成れる筈だ!」と熱弁され、奮起された。


 「闘士ウォーリアを諦めていないなら、俺の夢を君に託したい」とまことから告げられた太朗たろうは夢を諦めない決意を固め、「弟子にして欲しい!」と頭を下げて頼み込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る