戦技なき闘士

ネミ

第1話

 この世界には人間の能力を数値化する謎の技術が存在する。

 その技術を用いて能力の値〝能力値ステータス〟を表示する道具〝能力値板ステータスボード〟は人々の能力を具現化した。


 土田どた家が管理する〝つちりょう〟では年に一度、田舎の村々を訪れる能力調査員が領主(土田どた家当主)の命で子供の〝適性値アプティテュード〟を調べている。

 個人が鍛えた末に到達する能力の最大値を数値化した適性値アプティテュードはその者の将来性を示し、子供に限定すれば能力値ステータス以上に重要と考えられている。


 適性値アプティテュードの値が〝未知数アンノーン(計測限界値)〟に区分される〝Sランク〟と示され、「伝説を残す闘士ウォーリアに成るかもしれない」と将来を期待された男児の太朗たろうは村民から大切に育てられた。


 6歳の太朗たろうは上京し、土領つちりょうの都市〝黒土こくど〟の黒土こくど闘士ウォーリア学園がくえんで寮生活を始めた。


 適性値アプティテュードの高さから将来性を期待され、優遇された太朗たろうは調子に乗っていた。

 が、小学級6年生(12歳)になっても〝戦技スキル〟を習得できなかった太朗たろうは「能力値ステータスが高いだけ」「能力値ステータスの無駄」などと愚弄される日々を送ることになった。


 超常的な現象を起こす戦技スキル能力値ステータスに比例して強さが決まる。

 能力値ステータスの高さは戦技スキルの強さに直結するが戦技スキルが使えなければ高くても意味がない。

 先天的な才能と後天的な努力で習得する戦技スキルの将来性は能力値ステータス適性値アプティテュードで測れない未知の領域。


 戦技スキル得者は同様の能力値ステータスを持つ戦技スキル未習得者10人分以上の戦闘力になると考えられ、最高位の戦技スキル(Sランク)であれば100人分の戦闘力に相当する例もある。


 戦技至上主義スキルしじょうしゅぎは習得している戦技スキル闘士ウォーリアの価値を測り、能力値ステータスより戦技スキルが優先される闘士ウォーリア社会を形成している。


 適性値アプティテュードが高く傲慢になっていた太朗たろう戦技スキルを習得できず、習得した者たちから愚弄されるようになった。


 戦技スキルを習得できずに小学級の最終学年(6年生)を終えそうな太朗たろうは中学級へ進学する条件〝戦技スキルを習得している事〟を満たせず、故郷への帰還が迫っていた。

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