第4話

 学園を卒業し、黒土こくど治安部隊長の厚意で宿舎暮らしを始めてから3年が経った頃、15歳の太朗たろう冒険者アドベンチャーと認められる為に必要な登録を終え、衛兵の皆さんと別れる準備を行っていた。


 適性値アプティテュードが高い自身を誇って傲慢になり、戦技スキルを習得できず虐げた人々から意趣返しを受け、能力値ステータス至上主義を共有する反社会勢力金剛に勧誘され、まことさんに過ちを止められ、叱り導いてくれた衛兵の皆さんから教わった技術や価値観の大切は掛け替えのない宝だ。


 能力値ステータスが高い事、戦技スキルを習得している事、それらに拘り、基本的な技術を軽んじていた過去の自分は衛兵の皆さんに技術で圧倒され、この世界は単純ではなく、複雑である事を思い知らされた。


 優れた戦技スキルで強者と呼ばれる者、戦技スキルで劣りながらも優れた能力値ステータスでしがみつく者、戦技スキル能力値ステータスが他より劣っていても有効活用する知恵や技術で結果を残す者、など闘士ウォーリアの在り方は各々で異なる。


 様々な在り方が許されるなら、戦技スキルを使えないウィーリアが存在することはあり得ない――などと断言したくない。

 可能性が有るなら、可能性を否定できない限り、諦められるほど、長生きはしていない。


 宿舎を出る日、皆さんの別れる時、まことさんから家宝の首飾り(Sランク)を首に掛けられた太朗たろうは「(貰って)良いのですか?」と聞いたら「俺が持っているより、良いことは確かだ」と微笑まれた。


 皆さんから「挫折したら、何時でも帰って来い」「もう、ここは、君の家なんだから」と告げられ「帰らなくて済むように頑張ります!」と力いっぱい手を振って別れの言葉を言った太朗たろうは〝冒険者アドベンチャー同業組合ギルド〟の一つ〝白銀しろがね組合くみあい〟の黒土こくど支部へ向かい、街中を歩み始めた。

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