第5話

 太朗は、上流階級に仕える闘士ウォーリアと同等の力を持ちながらも異なる道を歩んだ人々の歴史と冒険者同業組合アドベンチャーギルドの今を黒土こくど闘士ウォーリア学園で学んでいた。


 大昔、高い能力値ステータスを有する人々の多くは〝王や国〟〝貴族や大商人〟などに仕える闘士ウォーリアだったが仕えるあるじを持たず世界を放浪していた人々は冒険者アドベンチャーと呼ばれていた。


 冒険者アドベンチャーは行く先々で農民から衣食住を与えられる対価に害ある魔物マモノを退治し、魔物マモノの縄張りから資源を集め、農民の生活を助けていた。


 冒険者アドベンチャーに救われた農民たちは頼りない貴族より冒険者アドベンチャーを頼り始めた。


 立ち寄った村々で食や宿を得られる冒険者アドベンチャー魔物マモノの縄張りに自生する薬草の採取や人里に降りてきた魔物マモノ退治を行ってもらう農民は利害が一致し、互いに頼り合った。


 貴族や王族より冒険者アドベンチャーを支援する農民や庶民が増え、冒険者アドベンチャーたちが持つ情報や商業的な価値に気付いた商人たちが出資し、冒険者同業組合アドベンチャーギルドが設立された。


 冒険者同業組合アドベンチャーギルドが出来るまで各々で活動していた冒険者アドベンチャーたちは同業組合ギルドの支援を受け、組織的な活動が活発になり、技術や情報の交換などが盛んに行われ、冒険者同業組合アドベンチャーギルドは急速に発展した。


 国境を越え、彼方此方の町に冒険者同業組合アドベンチャーギルドの支部が作られた。


 黒土こくど闘士ウォーリア学園で教わった冒険者同業組合アドベンチャーギルドの歴史は大まかな流れに限られ、幾つかある冒険者同業組合アドベンチャーギルドの個性までは具体的に習わなかった。


 冒険者同業組合アドベンチャーギルドの大規模化が始まった頃、冒険者同業組合アドベンチャーギルド白銀はくぎん〟は特定の場所に冒険者アドベンチャーが過剰に集まり仕事が不足し始めた。

 更に情報が行き渡らず冒険者アドベンチャー不足になる地域が生まれた。

 それらの出来事を白銀はくぎんの上層部は問題と認識し始め、対策を考え始めた。


 白銀はくぎんは問題を解決する為、能力値ステータスや実績に応じてS>A>B>C>Dの5段階でランク分けを行い〝冒険者証アドベンチャーライセンス〟を白銀はくぎんが発行し、依頼を仲介する事で全体の調整を行った。


 以前は物資や宿、食事などの支援が冒険者同業組合アドベンチャーギルドの役割だったが冒険者証アドベンチャーライセンスを発行し、依頼を仲介し始めてから両者はより密接になった。

 が、冒険者アドベンチャーの直接的な仕事相手が農民などの人々から冒険者同業組合アドベンチャーギルドに代わり、不当な仕事が行い難くなった。

 その需要を満たした他の冒険者同業組合アドベンチャーギルドの台頭は……別の機会に。


 依頼者から受け取る報酬の幾らかを仲介する冒険者同業組合アドベンチャーギルドが受け取り運営費などに充てる。

 白銀はくぎんは依頼者や依頼の信用性などを調べ、報酬が支払われなかった場合は白銀はくぎんが補填し、依頼者が勝手に依頼を破棄した場合は契約違反を理由に賠償金を徴取し、無駄な仕事を行わせた冒険者アドベンチャーへ補填し、冒険者アドベンチャー社会に厳正なルールを作った。


 治安部隊の宿舎で生活していた太朗たろうは15歳になって直ぐ、冒険者同業組合アドベンチャーギルドの一つ白銀はくぎん黒土こくど支部へ行き、冒険者証アドベンチャーライセンスの発行手続きを行った。


 信頼を大切にする白銀しろがねを利用するには白銀しろがねが発行している冒険者証アドベンチャーライセンスが必須。

 で、15歳以上か? 罪人か? などの確認や必要最低限の能力や常識を有しているか? など、幾つかの試験や面接が行われる。年齢の情報は必須ではない。

 条件を満たした者は後日、白銀しろがねから冒険者証アドベンチャーライセンスが発行される。


 白銀しろがね黒土こくど支部へ行き発行されたライセンスを受け取った太朗たろうは新人(Eランク)が受けられる依頼の多い地域に十分な空きがあるか受付嬢に確認した。

 書類を確認した受付嬢から「一週間前の情報によれば、3人分の空きがあります」と返答された太朗たろうはお礼を言い、つち領の赤土あかどまちへ向かう馬車に乗った。

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