第12話

 朝食や冒険の支度を終えた太朗たろう白銀はくぎん赤土あかど支部へ行った。


 Eクラスの掲示板から、昨日見つけた納品依頼を取り受付へ提出した後、契約書に記入し終え、契約金を支払った太朗たろうは「いってらっしゃいませ」と告げる受付嬢に送り出され、紅樹魔界こうじゅまかいへ向かった。


 受けた依頼は草食的な動物の魔物マモノ魔獣マジュウ〟から取れる肉を納品する内容。


 徒歩で紅樹魔界こうじゅまかいの森林に足を踏み入れて数十分……、10日間を費やし、頭に叩き込んだ地理は目的の草食的な魔獣マジュウの動線を辿らせ、標的の下へ導いた。


 自身が発する気配を意識しながら背負う鞄から弓を取り出し、矢筒から掴み取った矢と共に弦を引き、標的の急所へ狙いを定めた。

 弓が壊れない様に加減しながら引いた弦を離し、放った矢は頭を下げ、池の水を飲み渇きを潤す魔獣マジュウの急所へ命中した。

 倒れた仲間を置き去りに逃げ出す次の標的マジュウを狙った。

 矢を番える速度から焦りを感じ取り、平常な心を取り戻すため「一発は打つ時間がある」と口を動かしながら狙いを定め、2本目の矢を放った。



 横たわり動かない2匹の魔獣マジュウから内臓を取り可能な限り血液を出した後、冷却玉れいきゃくだまで冷やした。


 魔物マモノが保有するの大半は血中に有り人界へ運ぶ魔の量を減らす為に現地で可能な処置をすることが白銀から推奨されている。

 冷却玉れいきゃくだま魔物マモノから作られた道具で特定の条件下で冷たくなる性質を利用し、生肉などの腐敗を遅らせる冷却剤として重宝されている。


 冷やした魔獣マジュウを縄で縛り、背負って運ぶには2匹が限界か――と思った後、無益な狩りは控えよう――と考えて魔界緩衝所まかいかんしょうじょへ向かい紅樹魔界こうじゅまかいを出た。


 魔界緩衝所まかいかんしょうじょ浄化委託課じょうかいたくかの受付へ背負った魔獣マジュウの死体2つを預け浄化の代行を依頼すると「費用や期間を算出しますので、時間を空けて赤土側窓口に来てください」と告げられた。


 算出が終わるまで魔界マカイで活動し、少なからずに汚染された身体や衣類と道具など浄化するため銭湯へ向かった。


 銭湯の入り口窓口で装備を預け、簡易的な衣服や身体を拭く布などを借り、更衣室へ行き服を脱いだ。


 身体を洗い流し、大きな浴槽で疲れを癒しながら、仕事終わりの冒険者アドベンチャーと情報を交換しつつ、世間話をした。

 身体のを浄化し終え、銭湯の出口側窓口で浄化を終えている預けた装備を返却され、浄化料と銭湯利用料を支払い、借りた服や布を返した後、赤土町あかどまち側の浄化委託課じょうかいたくか窓口へ向かった。


 「鹿の魔物マモノ2頭の浄化には数時間ほどの時間を要しますが加工や納品は如何しましょうか?」と窓口係から問われ、手元に欲しい素材は無いか? と考えた末に「お願いできますか?」と答えた。

 「納品しない素材は如何しますか? 白銀が買い取ることも出来ますが」に「お願いします」と答えたら、棚から取り出した契約書を差し出され「こちらへ記入してください」と告げられた。


 必要な項目に個人情報などを書き込み、同意を示すため、指に塗料を付け指紋を残し、契約を結んだ。

 

 「翌日の午後には加工や鑑定が終わると思われますので、白銀はくぎん赤土あかど支部の受付へお越しください」と語られ「浄化の料金は……」に告げる受付係に従い、代金をしらい、宿舎へ向かった。


 白銀赤土はくぎんあかど支部へ納品しなくても魔界緩衝所まかいかんしょうじょが代行してくれるから行う必要はないが、報酬から手数料が差し引かれる。



 翌日、受付へ行き、赤土あかど支部で依頼を達成した報酬金と白銀はくぎんに売った素材の代金を受付嬢から渡された太朗たろうは薬草や木の実を得ながら魔獣マジュウを狩り納品する方針で本日の依頼を選んだ。


 幾重に依頼を達成し、次のDランクへ上がる試験を受けるために無理のない程度に可能な限り多くの依頼を達成しようと考える太朗たろうは順調な勢いを失いたくなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

戦技なき闘士 ネミ @nemirura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る