第二章9 『決着③』
――内界。
それは魅剣羽亮の精神世界に当たる空間。
覚醒時に人が肉体を操り外の世界と干渉する、意識ある状態の空間を外界。
眠りに落ち、肉体が意識のない状態で意識が自分の世界に入る空間を内界。
外界を現実という世界とするならば、内界は心の奥底にある自分だけの世界。
意識とは、外界と内界を行き来している魂のような存在。
外界で肉体が滅べば、魂の器はなくなり死を齎す。
逆に魂が滅べば、肉体は空の器となり、いずれ死が訪れる。
そんな世界の片隅、『魅剣羽亮』の内界には、二つの意識体が存在している。
『ふふ』
長い金髪に空色の瞳を宿し、白いワンピースに身を包んだ少女。
『
『……なんだよ?』
黒く逆立った髪、青白い肌を隠す羽毛、グローブや革靴を身に纏った青年。
『
『虚空も優しいところあるんだなと思って。羽亮に少し魔力分けてあげたでしょ?』
彼らもまた、魅剣羽亮という器を失くした途端、消えてしまう者たち。
だからこそ、外の景色を目にソラは胸を撫で下ろしつつ、虚空の行動に笑みを零していた。
『……あいつが死ねば、俺たちも死ぬ。そんだけの話だ』
ぶっきらぼうに背を向けて、岩の上で横になる。
それは虚空の照れ隠しであると、ソラは知っている。
『―――』
黄金色に包まれた暖かな場所で、天を仰ぎ安堵を覚える。
頭上にあった黒き闇の繭が解けており、外の実体が気絶をしている。
それがため、宿主である『魅剣羽亮』の意識が舞い降りてきている。
『おっと』
ソラのもとへ覆い被さるようにゆっくりと落下し、それをソラはすかさず抱きしめ、受け止める。
心身ともに疲れ果て、魔力は枯渇し、生命力を削って魔力へと変換した。
危うく死を招く結果を虚空の援助により、免れることができた。
意識までも眠りにつくほどの死闘だった。
『よく、がんばったね』
そっと羽亮の頭を撫で、ソラは微笑む。
誰かのために必死で戦場を駆け、闇に囚われながら、強敵を前に何度だって立ち上がる。
どれだけ自分に卑屈で、過去に背を向けた存在であろうと、信念を貫いた。
虚空と対峙した時とは違い、明らかに成長を遂げている。
もしかしたら彼は、本当に英雄になってしまうのではないかと、ソラは抱きしめながらにそう思う。
いや、彼はもう、とっくにこの街の英雄であると、英雄になる日も遠くはないと、確かな兆しを感じていた。
この戦いはのちに魅剣羽亮の英雄伝として語り継がれることだろう、
しかしそれは、誰も知らない未来の話。
いずれ訪れるであろう先のことにソラは胸を膨らませる。
彼が好きだと言ってくれた笑顔を添えて、羽亮を強く抱きしめていた。
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