第一章10 『誓い⑥』

「なぁ……」


「何?」


 学院を後に黄昏時の帰路を歩き、龍司は口を開く。


「先生はなんで、俺たちにあんなこと言ったのかな」


「あんなこと?」


「今朝、『羽亮はしばらく休む』って」


「それは……」


 真相を隠すための方便。

 しかし龍司が言っているのは、おそらくは違う意味でのこと。


「羽亮はフェザーなんだろ?なら普通、退学扱いとかになるんじゃねぇの?」


「確かに……」


 羽亮がフェザーと確定され、指名手配されたなら、退学処分となる。


「それに何で羽亮だってこと、伏せる必要があるんだ?」


「僕たちのためにだよね……?」


「先生一人の力で、情報を伏せることなんてできないだろ」


「言われてみれば……」


「おそらくは会議で先生が申し出たことなんだろうけど。上も上だよな。周りにも魅剣羽亮だってわかったなら、簡単に捜査可能なのに。そうしなかったってことは」


「上もまだ、決めあぐねていることがある……?」


「たぶん」


「けど、指名手配は確定だよね?」


「手配されるだけで、まだ内容に関してはわからないだろ。最悪は死刑だけど、罰せられる内容がもし、他だったら」


「羽亮を助けられる可能性がある?」


「ま、憶測だけどな。昨日と今日の会議で、決めたのが魅剣羽亮を指名手配することだけだとしたら。処罰の内容が死刑ではなかったとしたら」


「まだ、希望がある」


 いろんな奇跡が重なり合った先に光がある。

 それだけで、今を生きる原動力になる。

 野心が、芽生える。


「強くなろう、颯斗」


 立ち止まり、龍司は振り返る。

 自分と同様の覚悟の瞳を持って。


「うん……」


 沈みがかった夕日に照らされながら、腕をぶつけ合う。


「強くなろう」


 華聯のために。先生のために。

 誰でもない、自分たちのために。


 そんな一つの思いを胸に。


 今日ここに誓いを立てていた。


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