第一章10 『誓い④』

 花園邸を後に歩く足取りが重くなっていくのを感じる。

 踏みしめる落ち葉の音がうるさく思えるほど、互いに気が滅入っている。


「なんか、珍しいよな」


「うん……」


「お嬢が、あんなこと言うなんて」


「そうだね……」


 平和主義の彼女が、強くなろうと誓わせる。

 自分たちも思っていたこと故に自然と相槌をして。

 彼女の見せた儚げな笑顔が離れずにいた。


「なぁ、颯斗」


「何、龍司」


「今から先生のとこ、行ってもいいか?」


「奇遇だね。僕も会いたいと思ってた」



「じゃ――」



 顔を見合わせ、互いに後方へ走り出す。



 山の上、学院を目指して――。


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