第一章10 『誓い③』

 ――花園邸。



「そう……」


 お見舞いに来たという二人を招き入れ、今日の出来事を報告される。



 目の前には不安げに顔を顰めた、白銀の髪に灰眼をした彼――『如月龍司きさらぎりゅうじ』。



 怪訝そうにこちらを見つめる、エメラルド色の瞳をした茶髪の彼――『月島颯斗つきしまはやと』。



 二人が齎す話題はもちろん、『魅剣羽亮』についてだった。


「お嬢、なんか知らない?」


「羽亮の居場所」


 彼の家が立ち入り禁止区域となり、二人は何も知らない。

 それだけでわかる事実が一つ。


「ううん、知らない」


 誰かが情報に制限をかけている。

 今朝フェザーが現れたというのに。

 その存在を明るみにしていない。


 もうどこにいるのかもわからない、彼の正体を。


「お嬢、それ……」


 何に気づいたのか、颯斗が首元を指す。

 視線を下ろせば、自分も今朝方に気づいた物があった。


「ああ、これ……」


 胸元にまで垂らされたエメラルド色のペンダント。

 聞けば特殊な魔力が込められた魔道具だと父は言う。

 誰がくれたかは、言わずとも知れていた。


「大切な、プレゼントなの」


 もう会うことはないからと、寂しくなる自分のためなのか。

 今までの感謝を形にした、贈り物なのか。


 彼のことだから、きっと後者なのだろう。

 ありがたいけれど、そこに嬉しさは感じられなかった。


 これがあれば、彼を感じていられる。

 淡い思い出が蘇っては、忘れることを拒ませる。

 彼がくれたプレゼントだからと、外すことさえできないで。


 残酷なことをするなと、笑い泣きするばかりだった。


「ねぇ、二人とも……強くなりましょう」


 そのせいで、思わずにはいられない。


「三人で、強くなりましょう」


 もう戻って来ないなら、戻って来られないのなら。

 父の言ったことの意味が、今ならば理解できる。


 もう一度、彼に会いたいと願っているだけでは、何もない。

 ならば、こちら側から会いに行けばいい。

 会って、文句の一つでも言ってやりたい。



 騎士なら傍にいなさい、と――。


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