第一章5 『光②』
「正直、やったことなかったけどな」
フェザーによる魔法が目の前まで迫ってくる中、脳は考えることをやめなかった。
残り僅かの魔力量で何ができるか。
防ぐと考えた時に頭に浮かんだのは、とっさの防御魔法で。
「できてよかった……」
不安と安堵。
実戦にて成功するとは、どれだけの幸運か。
「名付けて……《インビジブル・シールド》ってところか」
無色透明の半球壁。
微量の魔力を繋ぎ構成された魔法。
とっさに作ったもの故に、雑な作りとなっているが、5枚ほど展開して何とか防ぐことができた未完成技。
習ったこともないことを自らの手で作り出したのだから、我ながら凄いと思う。
「そんじゃ、そろそろ……」
「……っ」
フェザーの表情。
その驚愕した顔に含み笑いを浮かべて、彼女の作戦を思い出す。
「お前を、封印する」
目を凝らし、空気中にある光粒子を確認する。
先ほどの魔法でさらに数を増やしていることに気づくと、目の前にいる敵の憎悪もさらに増していた。
「俺を、封印するだと?」
「ああ」
「戯言を」
変色する瞳。
黒眼と金眼が対峙し、互いの背に広げられるは黒い翼と白い片翼で。
舞い散る羽。
漆黒を纏いし彼と同等の白翼を羽ばたかせていることに複雑な感情が渦を巻く。
自分の中に彼女がいる。
人間離れした治癒力と、あるはずのない魔力量。
それはもう、フェザーの象徴でしかない。
つまり、俺は――、
――俺は、フェザーだ。
もう人間なんかじゃ、いられないんだ。
「行くぞ」
白い片翼を背に生やし、向かってくる敵を威嚇する。
が、相手は翼を使って獰猛果敢に攻めてくる。
「《ダーク・ストーム》!!」
低空飛行で接近しながらの空中技。
何枚もの黒羽が嵐の咆哮のように身を襲う。
けれどこちらにも同等の白翼があるため、平然と薙ぎ払う。
「《シャドウ・ミスト》!」
それに気を取られていたせいか、彼の口から黒い霧が発生させられ、視界を奪われる。
広範囲の闇魔法。
これではどこから来るのかわからない。
この金眼を頼っても、何も見つけられない。
「《ファントム・ブレイク》……」
一瞬、闇の中からか細くも声が聞こえ、背後からの不意打ちを防ぐ。
運良くも白翼にぶつかり、こちらも反撃しようとするが、相手はすぐさま闇へと消えてしまう。
――さっきの音……。
気づいたことに、先ほどの攻撃を防いだ瞬間に鳴り響いたのは鉄の音で。
それは剣を交えた時に鳴る音と似ていた。
「……」
それ故、冷や汗が頬を伝う。
どこから来るかもわからない敵。こちらは武器がないというのに。
魔力も空欠で。
策があるとすれば――、
「……っ!」
不幸中の幸いにも手に入れた翼で、霧を掃い、相手の驚く顔を眺めて追撃を防ぐことくらいだった。
――あれか。
見つけた矢先、彼の手に持っている剣に目が行く。
それは羽を集めて固めたような一本で。
彼が油断している間にそれをへし折る。
と同時に、彼の胸倉に一発ぶちかます。
「ぐはっ……」
吹き飛ばされ、床に倒れ込むフェザー。
未だに腹部の傷口から血を垂らし続けながら、歯を食いしばって起き上がろうとする彼の生命力に驚嘆する。
その光景を目に、ゆっくりと瞳を閉じ、左手を指し出す。
脳裏に浮かぶは、先ほどあった彼女とのやり取りで。
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