第一章6 『導きの羽①』
「――あれか……」
とある屋上。
背中に日差しの温もりを感じながら、男はそこに開けられた風穴の奥、瓦礫の広がる屋内へと目をやる。
そこに横たわる一人の少年。
それを見つけると、フードに隠した顔を隣に佇む仲間へと向ける。
互いにローブを身に纏い、表情はわからないが内心ここまで誰にも気づかれずに来れたことに安堵し、作戦決行の相槌を打つ。
屋内へと飛び降り、瓦礫の土を踏む。
一人は少年へ颯爽と近づき、その後を追うように男はゆっくりと進む。
うつ伏せに倒れ込んだ彼の身体をそっと抱き寄せ、息があることを確認すると、彼女は持ち物である回復薬を取り出し、一滴ほどその唇へと垂らしてやる。
その光景を確認すると、男は辺り一帯を見回し、感慨深く佇む。
瓦礫の山。壁のめり込み跡。床のクレーター。
何かしらの魔法を使ったであろう形跡。
「ん……?」
そこには一枚の羽が落ちていた。
黒く消えかかった光。
その上へ覆い被さるように、舞い降りた白い羽が重なり、泡のように散った。
「皮肉だな……」
それを眺めながら思う。
この世界の歪さ。
互いが互いを思いやり、逃げ場など無く、共に犠牲となった。
一人は憎悪を燃やし、一人は愛を育んだ。
まるで、人のように――。
「……」
振り返り、彼女へと視線を移す。
背負われた少年を目に、ゆっくりと瞬きをして、
「行くぞ」
そうやって、光射すこの場を後にした。
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