喪失

 タクシーの白い座席に身を沈め

 見知らぬ街の闇を横切る



 一人でも生きてゆけるさ君ならば

 別れの言葉みんなおんな



 一人では生きてゆけない誰かより

 あなたを想う心残して



 ぼんやりと霞む視界に気づく時

 見慣れた景色 君の棲む場所



 思い出のない所まで行きたくて

 遠回りする さよならの後



 お揃いの箸と箸置きマグカップ

 捨てるほどには憎しみがない



 いつからか壊れた気持ち見過ごして

 追いかけていた恋の幻



 真夜中の途方に暮れる部屋の中

 君と暮らしたすべてがここに



 明日から生きてゆくにはどうすれば

 何も変わらず続く毎日



 恋だけがすべてじゃないと慰めも

 追い討ちかける抜け殻の身に



 ぽっかりと空いた心の真ん中に

 光射し込む蒼い満月

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