悲恋

 爪を切るぱちりぱちりという音を

 不意に遮るバイブレーション



 換気扇回して煙草吸う君の

 背中を抱いて「好き」と言えたら



 さよならの意味も忘れて唇が

 重なる夜は何も聞けずに



 燃え上がる胸の炎と冷静な思考に

 心引き裂かれても



 大切な宝物でも持つように触れる

 その手に指を絡めて



 もう一度生まれ変わって逢いたいと

 泣いたあの日に嘘はないから



 気まぐれや甘えでここに来る君の気持ちは

 愛と何が違うの?



 正解も最善もない恋心

 あなたが欲しい 今はそれだけ



 明日には部屋を出てゆく君の背に縋り

 誰にも渡したくない



 未来など見えない窓の鍵閉めて

 夜が明けるまで闇に溺れる

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