coffee

白井黒鳥(KS)

第1話

 何故だろう、自分の綴る言葉が自分のものではないと感じる。もう何時間も考えてるのに何故かわからない。

「はぁ、気晴らしにコーヒーでも飲もう。」

(コーヒー入れようか?…)ふとそんななつかしい声が聞こえたような気がした。

「ねぇ、瑠偉君少し休んだら?」でも…

「でもじゃない、コーヒー入れるから。一緒に飲もう?」わかったよ…

いつも彼女は強引だった。それでいていつも優しかった。僕はそんな彼女に憧れそして恋をした。彼女への告白は僕にとって人生最大の勇気だったと思う。初めて小説を投稿した時の何倍も緊張したし、彼女がOKをしてくれた時は人生で一番幸せだった。

 なんだか、なつかしいことを思い出した。あの頃の僕はまだ子供で図体ばかりが大人になっていたとんだと思う。僕は慣れた手つきでコーヒー豆を一杯分取りミルに入れる。ゴリゴリと小耳いい音と豆のいい匂いが漂ってくる。彼女の言っていた通りだ、だんだんと無心になっていく。

「うん、苦いね。」えっ本当に?

「はい、一口。」ゴク、うっ苦い…君みたいに入れられないよ。

「ふふ、最初だからね。大丈夫二人で一緒に入れていこ。」

 しゅんしゅんしゅんと、水の沸騰した音で我に返った何故だろう今日はよく彼女のことを思い出す。やかんを火からおろしサッとフィルターをドリッパーにつけ、削りきったコーヒー豆を入れ平らにならす。そしてお湯を注ぐ。まだ彼女の味には追いつけないが、かなり美味しく入れれたと思う。ああ彼女にも飲んで欲しかったな、無性にそう思った。

 ふとカレンダーを見る3月9日そこには〈結婚記念日♪〉と彼女の文字で書いてあった。

ああ、そうだ今日は彼女と結婚して10回目の結婚記念日だ。そして彼女がこの世を去ってから半年が経ったんだ。

 こうしてはいられないと、僕は入れたてのコーヒーを一気に飲み干す。胸が痛いのも構わず、僕はペンをとった。彼女のことを書こう。僕は一心不乱にペンを走らせた。それが僕にできる彼女への最大の恩返しだと思って。



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