第二章 第五十一話 断ち切る者

 キーーー!!




 扉が開く音と共に、俺はアンの能力であるアイアン処女メイデンを抜け出した。


「開いた!? まぁいいわ。さっさと消えなさい!!」


 レベッカはそう言い、とげを一斉に俺の方へ伸ばしてきた。


 時間が遅くなる。


 いつものゾーン状態だ。


 このつるぎであの棘を斬ることはできるだろうか。


 いや、今は信じるしかない。


 信じるんだ……俺を。


 俺の能力を。


「断ち切れぇぇぇ!!」


 俺は棘に向かって、刃を斬りつける。


 伸びた棘はスパッと斬れ、棘が落ちていく。


 落ちた棘はそのまま光の粒子となって消える。




「はぁ? なんで? なんでよ!!」




 レベッカは目を丸くしながら俺を見た後、鋭い目つきになる。


 そして、棘の生えた蔓を操り、勢いよく俺に攻撃を仕掛けた。


「残念だが、その攻撃はもう無意味だ」


 俺は向かってくる蔓をよこ一閃いっせんに振るう。


 蔓も先程の棘同様、スパッと斬れる。


 それもそうだろう。


 このつるぎ夢力オニロ自体を断ち切っている。


 どうも、レベッカの能力で出した蔓自体、夢力オニロの集合体みたいなものだったようだ。


 彼女は有り得ないと言いたそうな顔で、俺を見ている。


 俺は歩きながら彼女の方へ向かう。


「こ、来ないで! 来ないで!!」


 レベッカは全身を震わせながら、ぎこちなく後ずさる。


 そんな態度されても、俺の意思は変わらない。


「来ないでっていってるでしょ!?」


 つるが集まり、巨大な薔薇ばらの花が咲く。


 俺はその薔薇の花を見上げ、綺麗だなと思いながら、そのまま斬った。


 薔薇の花びらが舞い落ちながら、光の粒子に変わっていく。


 その奥でレベッカは後ずさる


「なんで? なんでなの?」


「なぜ見えない。本当の妹は……愛する妹はここにいるのに……」


 俺は彼女の方へ向かって行く。


「はぁっ!? アンはここに——ッ!?」


 レベッカは振り向き、椅子に腰掛けている人形を見ると、その人形の後ろにミニブギーマンが立っている。


 ミニブギーマンは不気味な笑みを浮かべ、「エイッ!」と言い人形を蹴り落とした。


「アン!!」


 彼女は急いで人形の方に走る。


 しかし、人形は彼女の目と鼻の先で地面に落ちた。


 すぐさま人形を拾い「アン! アン大丈夫? 痛いところはない?」と人形を慰(なぐさ)める。


 彼女は人形を大事に抱え、話続ける。


「アンは私が守らなくちゃいけないの! この子は能力持ってないから——私が守らなくちゃいけないのよ!!」


 レベッカの心からの叫びがとどろく。


 そうか、彼女は最初からアンを守っていたんだ。


 人形を本当のアンだと思いながら。


「あぁ……君はアンを心から守っていた。でも本物のアンを見えなかっただけだったんだな」


 俺はつるぎを上に挙げ、そのままレベッカを斬る。


 彼女とオロチ様と言われる謎の存在との関係を断ち切った。


 彼女はそのまま地面にした。

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