第二章 第五十話 攻撃を防ぐ

 視界に入るのは赤い光。


 まるで光に包まれているようだ。


 そこでふと思う。


 あれ? 光線に当たっているはずなのに、なんで痛くもかゆくもないんだ?


 俺は真っ直ぐ手を伸ばした。


 何か見えない壁がある。


 なんだこれは? どこから現れたんだ?


「よかった。私——守れてる!」


 隣からアンの声が聞こえる。


 声のする方に視線を向けると、彼女は両手を前に突き出し、レベッカの攻撃を防ぐかのように、真剣な眼差しで前を見ていた。


 赤い光が弱まっていく。


 高笑いしているレベッカが見えると、彼女は目を見開き、口をぽかんと開けた。


「なんなの……これ? どうなってるのよ! さっきまでこんなのなかったじゃない!!」


 レベッカは大声で叫びながら、棘を一斉に俺たちに向かって伸ばした。


 しかし、その攻撃は謎の壁によって貫通することはなかった。


「お姉様、そんなことしても意味ないよ。私の鉄の処女(アイアン・メイデン)はどんな攻撃からも守り、防ぐ。まぁ、聞こえてないと思うけど」




 くそっ! くそっ! くそぉぉぉぉぉぉ!!!




 レベッカの声が轟く。


 しかし、無情にも彼女の棘は刺さることはない。


 その状況を見ながら、俺はどう攻略すればいいか考える。


 鎧では彼女の蔓を斬ることも触れることもできない。


 逆に貫通される。


 どうすれば……。




「断ち切ればいいんですよ」




 耳元に聞き慣れた声が聞こえた。


 後ろを振り向くが誰もいない。


 断ち切る?


 何からだ?


 断ち切るということは何か関係を持っているということか?


 彼女たちが一貫いっかんして関係しているもの……。


「……オロチ様」


 そうだ。彼女たちはオロチ様と言っていた。


「アン、オロチ様って知ってるか?」


 俺はアンにそう聞くと、彼女は首を横に振り「知らない」と答えた。


 こいつだ。このオロチ様ってやつの関係を断ち切れば、この事件は解決する。


「アン、俺行くよ」


「わかった……準備できたら言って、合図するから」


 俺は「あぁ」と返事する。


 視界に見えるのは物理で斬ることも触れることもできない蔓と棘。


 どうすればこれらを斬れるだろうか。


 俺は籠手こてを見る。


 今のところ、俺の能力は願うとそれにあった武器が現れる。


 ならば能力を願ったらどうなるんだろう。


 俺は右手を突き出し、口にしてこう言った。




「俺は願う。がほしい」




 籠手が光の粒子のように消えていく。


 その粒子は右手に集まり、つるぎの形に変わっていく。


 俺はそのつるぎを握る。


 アンが「ねぇ、宏」と俺を呼んだ。


「なんだ?」と彼女に振り向く。


 彼女は首を傾げながら、左手を握り親指を立てた。


 なぜ首を傾げた。


 まぁいいか。


 俺も左手を握り、親指を立てる。


「行ってくる!」


「うん!」


 アンは俺に頷き、前を見つめる。


 よし、行くか。


「開けるよ」


「あぁ!」と答え、俺は真っ直ぐ前を向いて走り出した。

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