第二章 第三十九話 カラクリメイド ノコ・シュタイン
階段を上がり、三つの扉の前に立つ。
「どれが正解だろうねぇ」
「左からいってみる」
「まぁ、宏が言うんだったら、それでいいんじゃねぇか」
俺たちはそのまま左側の片開き扉へ向かい、その前に立つ。
そして、鍵穴に鍵を挿し、回した。
カチャッ
「開いた」
「やったね。賞品はなにかな?」
「賞品はベルのキスなんてどうだ?」
「よっしゃぁぁぁ!! すぐ頂戴!!」
「ちんちくりんのキスでこんなに喜ぶもんか?」
「喜ぶよ! ロリのキスだよ!? 年齢イコール彼女いない歴の僕に、キスって夢のような体験じゃないか。ここ夢だけどね!」
「なに言ってんだ? 宏、扉を開けてくれ」
「うん」と返事し、扉を開けた。
扉を開けると、赤絨毯の廊下が目に入った。そして、奥を見ると女性が立っている。
剣を腰に差し、白髪ショートでメイド服を着た女性だ。
彼女はじーっと無表情で俺たちを見ている。
ただ見られているのに、見られていない感じがする。
まるでマネキン人形に見られているようなそんな感覚だ。
「なんだあれ? マネキンか?」
「いや、妖魔だよ……二人とも彼女は僕がやるよ」と岩城が言う。
彼を見ると真剣な眼差しで彼女を見ている。
「どうした? そんな真剣な目でマネキンなんか見てよ」
「水島……これは勘だけどさ。彼女、この屋敷の中で一番強いと思うよ」
「「はぁ(えっ)?」」
思わず俺も亮夜と一緒に声を出してしまった。
どう見たってあれはマネキン人形にしか見えないのに、なんで強いと思えるのだろうか。
「大神くん、水島。これだけは言っておくね。自分が弱いと思った敵ほど警戒したほうがいいよ。何してくるかわからないよ」
そう言い彼は先導するように廊下を歩き始めた。
俺と亮夜は岩城の後についていく。
マネキン人形のような女性に近づくと、彼女は俺たちにカクンと急にお辞儀する。
俺たちはその場で止まった。
何する気だ? 読めない。
彼女はスッと姿勢を正し、早口で説明し始めた。
「当屋敷へようこそ。私は当屋敷でメイドをしております。ノコ・シュタインと申します。よろしくお願い申し上げます。この度、主人であるオロチ様並び当主であるレベッカ・バートリー様の
彼女は無表情でまた無感情で左側にある部屋へ向かわせるように手を差し伸べる。
隣から何か違和感を覚えた。
隣を見ると亮夜が険しい目つきで息を荒げている。
「亮夜?」と言った瞬間、彼は彼女の目と鼻の先まで近寄り大きな頭で睨む。
「あんた、何回あの子を偽物っていうんだよ! あの子は偽物じゃねぇ! 正真正銘あんたの仲間じゃねぇのか! あ゛ぁあ゛っ!!」
しかし、彼女は何も反応を返さない。無表情、無感情で手を差し伸べたまま動かない。
岩城が亮夜の肩に手を置き「意味ないよ。僕たちは部屋に入ろう。大丈夫、僕が倒すから」と言った。
それを聞いた瞬間、亮夜は「はぁ? 何言ってんだ?」と返す。
「だから僕が倒す。僕ひとりで戦う。君たちはさっきみたいに見てて」
「おい、岩城ふざけんなよ。俺にもやらせろ」と言うが、岩城は冷静に「君の能力じゃ、絶対に倒せないし、今回の戦闘じゃ、邪魔だ」と言い返した。
亮夜は手を拳にし震わす。
「くそっ!!」
そう彼は一言発して、そのまま左側の部屋に入った。
「ごめん、水島」と岩城が呟いた後、振り返り「大神くん行くよ」と真剣な眼差しで俺を見る。
「うん」と頷く。
そして、そのまま左側の部屋に入った。
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