第二章 第三十八話 屋敷探索
亮夜が廊下を見ていたので、隣に立ち俺も見る。
左に二つ片開き扉、奥にも片開き扉が見える。
「行くか」
「うん」と返事し、そのまま廊下を渡る。突き当たりを右に曲がり、少し歩くと外に出られる扉があった。
期待してドアノブを回してみたが、開かなかった。
「ここでふたてに別れるか、宏は奥を頼む」
亮夜はそう言い、近くの部屋に入る。
奥かぁ……道なりに進もう。
道なりに進むと通路と風呂場があった。
広い風呂場だ。
漫画やアニメとかのお金持ちが入ってそうな、豪華な装飾をしている風呂場。
一通りその場を見たが、これといってめぼしいものはなかった。
風呂場を出て通路の奥を歩く。
奥に扉がある。
カチャッ
開けると、箒や小さい
ここは物置か……ん? なんだこれ?
脚立に絵が立てかけられている。
見るとアンやベル、神代が倒したエルファバ。その他に知らない三人が描かれている。
女性二人に初老の男が一人。
みんな仲良く
こんな穏やかな表情なのになんでこうなったのだろうか。
物置を見渡したが、これもまためぼしいものはなかった。
戻るか。
俺は物置の扉を閉め、そのまま二手に別れた扉まで戻った。
戻ると亮夜が立っている。アンの姿はない。
「岩城と合流するぞ」
俺は頷き、亮夜と一緒に広間へ向かう。
広間には気絶中のエルファバに椅子に座る神代、その隣に立っている岩城がいた。
岩城が俺たちを見て「鍵あったかい?」と聞いてきた。
「いや、なかった。宏は?」
「なかったよ」
「えっ? じゃどこにあるんだい?」
「ここにあるわ」
神代を見ると、彼女の手には鍵があった。
岩城が恐る恐る「いつから持ってたんだい?」と質問する。
「あなたたちが探索している時に、エルファバの服が少し盛り上がっていたから、確認したら出てきた。アンは?」
神代が全員を見渡す。
俺は目をそらし、首を横に振る。
「そう……上にいる可能性が高いのね」
彼女は見上げ、天井を見つめる。
「岩城、そっちは何かあったのか?」と亮夜が質問する。
「こっちかい? こっちはねぇ。中央階段に近い部屋は長机と多すぎだろっていうぐらい置かれてる椅子があったよ」
「そこから椅子を拝借したのよね?」
「そうそう」
「で、もう一つの部屋はどうだったんだ?」
岩城は俺を見る。
「んー、それがねぇ。おかしいんだよねぇ。椅子とかベットとか物置みたいに置かれてるんだよ。たぶんこの後、戦うのがわかってたみたいにねぇ」
「あの猿の仕業じゃねぇか? 分身できるしな」
「たぶんそうだと思う。水島はどうだったんだい?」
「こっちは立派な厨房と流し場があっただけだ。濡れてる皿が水切りに置いてあったから、さっきまで使われたんだろうな」
「そう……大神くんはどうだったの?」
神代が俺を見ている。
俺はみんなに風呂場と物置のことを伝えた。
「またおかしな所にその絵はあったねぇ」
「仲良く見えた……か。ちんちくりんがこの屋敷に入らなかったのは……」
亮夜が何か気づいたのだろうか。
でも何に気づいたんだ?
「実際、仲良しだったからよ。アンとベルからこんなことはしないって言ってた」
「そうか、ベルちゃんが入らなかったのは当主たちみんなを傷つけたくなかったからだね! さすがマイラブリー☆エンジェル、ベルちゃん!」
「岩城くん……今気づいたの?」
「実は俺も、今気づいた」と亮夜が手を挙げる。
俺も無言で手を挙げた。
神代は大きなため息を吐き「あなたたち」と呟く。
ごめん、わかってなかった。
「まぁいいわ。上の階にはあと三人とアンがいると思う。殺すなっていうのは難しいと思うから、みんな生きて帰ることを思いなさい」
神代が真剣な眼差しで俺たちを見ている。
「当たり前だ。ぜってぇ帰るぞ」
「うん」
「絶対勝つ!」
「そう、はい」と神代が鍵を俺に渡す。
「あとはよろしく」
「「おう(うん)!」」
俺たちは頷き、そのまま中央階段を上がるのであった。
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