第二章 第三十七話 二階に上がると
神代とエルファバがゆっくりと下りてくる。
「神代さん、生きててよかった」
俺は心から安堵した。
彼女はエルファバを蔓で拘束した後、険しい顔で俺にこう言った。
「なんであなたはこういうことするの?」
「えっ?」
「一歩間違えれば、あなたは消えているのよ? わかる?」
あぁ、そうか。
確かにあそこでちゃんと隠れていれば、こういうことにはならなかったもんな。
俺は「ごめん」としか言えなかった。
「ごめんってあなた……はぁ、もういいわ。怒りもしないし、褒める気もしないから」
彼女はそう言い、枝に刺さっているもう一本の矛を抜き取る。
矛は火の粉となって消えると、
見上げると、発光している大きな果実は徐々に
えっ? 何が起こってるの?
葉っぱ、枯れるの早くね?
枝が徐々に
「慌てなくていいわ。もう終わるから」と神代が言うと、俺たちは広間に立っており、先程まであった木は灰になって消えた。
「よっ、お疲れさん!」
「お疲れ様だよ。さすが神代さん、勝てると思ってたよ!」
亮夜と岩城が近づいてくる。
「ふっ、お世辞でもありがたく受け取っとくわ」と言った瞬間、彼女は尻餅をついた。
はぁ……はぁ……はぁ……
彼女の吐息が聞こえる。
「ごめんなさい、もう動けないみたい。少し休憩するから……」
「おう、わかった。二階へ行こう」
「あぁ」
「行こう行こう!」
俺たちは中央の階段を登った。
上がると下の階よりも狭いが広間になっており、左右に片開き扉と真ん中に両開き扉があった。
それを見た瞬間、岩城が「三人一斉に開けようよ」と提案した。
「そうだな。その方が効率がいい。宏もそれでいいか?」
「うん、やろう。俺は真ん中を開ける」
「じゃ、僕は右!」
「俺は左か」
真ん中の両開きの扉の前に立つ。
俺はドアノブに手を掛ける。
「開けるぞ」と亮夜が言う。
ドアノブを回した。
ガチャガチャガチャ……ガチャガチャガチャ……ガチャガチャガチャ……
「開かねぇじゃねぇかよ!!」
「また鍵がいるのかい?」
「そうかもしれない。下の階で探そう」
俺たちは階段を下りる。
踊り場から気絶しているエルファバと赤絨毯に倒れている神代が見える。
倒れてる!?
「神代さん! 大丈夫!?」
「ふぁっ!?」
神代が勢いよく上体を起こす。
「なんだ、寝てただけか」
俺たちはそのまま階段をおり、彼女達に近づく。
よかったと思っていたが、彼女は不満そうな顔で俺を睨む。
「ご、ごめん」
「神代さん、許してあげてよ。実際、倒れているようにしか見えなかったし」
「はぁ、そうね。そういう風にしか見えないか、ねっ転がってただけなんだけど……上はどうだったの?」
「三つほど扉があったんだがよ、全部閉まってた」
「そう、じゃ鍵を探しに行くのね?」
「そういうことだ」
そうか、今からここを探索するのか。
広間を見渡す。
中央階段から左側に両開き扉が二つ、正面に玄関に続く扉、右側に片開き扉が一つある。
「これもさっきみたいに三人で扉を開かないか?」
「そうだね、その方がいいね」
「わかった。俺は片開きの方に行く」
「じゃ、僕たちは両開きの方に行こう」
俺は頷き、階段に近い両開き扉の前に立ち、ドアノブを回す。
カチャ
開いた。
中を見ると長机にすごい数の椅子があった。
ここは食堂か。
俺は後ろを返し、大声で「ここは食堂だよ」とみんなに伝える。
亮夜が「こっちは廊下だ」と答え、岩城は「こっちは……物がいっぱいあってよくわかんない!」と答える。
「わかった。岩城、そこと食堂を見てくれ、俺と宏はこっちを探索するからよ」
「了解! ほら行っておいで」
岩城が手を亮夜に向け、俺を行かすように促す。
「わかった」と岩城に言い、俺は亮夜の方に向かうのだった。
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